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第122話
彼は少し言葉を詰まらせて「はっ?」と声を上げた。
「なぜ王子が俺たちのセックスを?」
見られたことそのものよりも、どうして見られたのか
気になったらしい。
「えっ、そこ?」
「だって、部屋でしかしていないだろう? 彼を部屋に招いたことはないし、招いたところで見せるわけもないし」
「そりゃそうだけど」
正直、見られたって聞いた瞬間に激昂するんじゃないかと思ってたのに。
思ってたのと違う論点を突きつけられて、自分の中のわだかまりみたいなものが、おもしろいくらいスルッと消えてしまったのを感じた。
(こいつ、そもそも激昂するタイプじゃないか)
それなりの付き合いなのに忘れていた。別荘で俺の心の傷のことを話したときも、静かに怒ってくれただけだったし。
「ドアの隙間から見たらしいよ。ドア開いてて、そこから見たみたい」
「ドアが? 俺たちがそんなに不用心なことをしてしまっていたというのか?」
「しちゃってたらしいね」
「oh… なんということだ…」
その落ち込みようをみると、見られたことそのものよりも、自分の警備体制の甘さを嘆いているらしい。
「いや、あのさ、そこじゃなくない?」
話が逸れそうでツッコんだものの、彼の嘆きは止まらない。
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