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第123話
「ああ、わかっている。もちろんさ。見られたことそのものを嘆くべきだというんだろう」
「わかってんじゃねぇか」
「手薄にしてしまったから隙が生まれからそうなってしまったってことだからな」
深いため息をついた彼が、改めて俺を見た。
「だからお前の体を見られた。俺だけが見ていい姿を」
目に明らかな怒りが浮かんでる。人ってどうして目に感情が表れるだろうな。見るだけで、彼が何を思っているのかが、脳と心臓に直接伝わってくる。
「……まぁ、ほら、もしかしたらそういう冗談かもしれないし」
自分から言い出したのに、あいつをフォローするようなことを言ってしまう。
「彼はお前に直接見たと言ったんだろう? 冗談だとしたらタチが悪い。例えば自分の妻の裸を誰かに覗き見されてそれを妻本人に言われたとしたら、怒らない男がいると思うか?」
男女問わずさ、と付け加えた。
「お前を、そして俺を侮辱されたのと同じだ。とても許せることじゃない」
ああ、よかった。
ちゃんと怒ってくれている。
目に怒りを溜め込んだ彼が、俺の目を見つめながら言うことを、冷静に受け止めている部分があった。
激昂するって程じゃないけど、彼が言ったように、彼は俺の痛みをきちんと受け止めてくれている。
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