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第124話

「大丈夫だよ、ありがとう」 彼がヒートアップしないように宥める。ぽんぽんと背中を叩きながら、なるべく穏やかな声音で話しかけた。 「いいやハニー、俺は怒りが収まらない。彼はあまりにも傍若無人な振る舞いをしているだろう」 「そうだけど、そんな奴のためにお前が怒る必要ないんだよ、ありがとう」 怒って欲しかったり落ち着いて欲しかったり、我ながら都合がいい。自分の怒りや不快感を彼がそのまま体現してしまいそうで怖かったんだと思う。 「それなら、もう俺のことほっぽってどっかに行かないでくれよ。昔の友達に会うのもいいけど、それなら一緒に連れてってほしい。一人にしないでくれよ」 いつもならじゃあ行ってこいよって言ってしまうところを、思い切って、しっかりと、素直に、自分の気持ちを伝えた。 モヤモヤをかかえたままだった気持ちが、すっと落ち着くのを感じる。 「あぁ……それは本当にすまなかった」 俺の心とは対照的に、彼がしょんぼりした顔をする。結局どんなやつにどんな用事があって出かけていたのかなんて聞いてなかったけど、俺に隙があるとしたら、彼がそばにいない時に決まっている。実際に声をかけられたのも彼がいない時だったわけだし。

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