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第125話

「ちょっと寂しかった。英語通じるから言葉には困らないけど、知らない国だし、あんまりあっちこっち行けないし」 俺が話せば話すほど、彼は表情を曇らせる。 「結局城の中をウロウロするしかないじゃん。そうすると、あいつに会うんだよ」 「そう、だったのか」 「まぁお前といるとき街でも会ったけど、なんか追いかけられてるみたいに、とにかく会うんだよな。さっきもそうだっただろ」 言いながら、ストーカーみたいだなと思った。こんなおっさんにストーカーなんて、笑えもしないギャグだななんて思いながら。 彼は曇った表情の中、少し神妙な色を入れながら頷いた。 「お前を守るといっておきながら、結局守りきれていないんだな、俺は」 「いや、そこまで大それた話じゃないけど」 「確かに、たくさんの招待客のいる中で、王子に出会う確率はやけに高いような気がする」 深いため息をつきながら、ゆっくりと俺を抱きしめてくる。 「すまなかった。これからはずっとそばにいるからな」 耳元で掠れた声で囁くみたいに言われると、すっと落ち着いたばかりの心の中が、じわじわと温かくなってくる。 「うん、頼むな。そばにいてほしい」 抱きしめ返して、また背中を撫でた。

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