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第126話

わがままかなと思ったけど、実際ほっとかれたのも寂しかったのも事実なんだし、たまにはわがまま言ったっていいだろ。 「本当に悪かったハニー、愛してる」 謝罪を聞きながら、心の中でぺろりと舌を出す。 広すぎる背中は、とても腕が回りきらない。ぬいぐるみみたいにぎゅっと抱きしめられると、腕どころか指先もギリギリ触れられるかどうかという感じ。 「それで仲直りというのも、おかしな話かもしれないが」 言いにくそうに、小さな声で言う。 胸に埋めるみたいにしてた顔を上げると、途端に唇を奪われる。 「仲直りしないか、ハニー?」 背中からケツまで、ゆっくりと静かに撫でられた。 撫でられた部分は線を引かれたみたいに、ゾワゾワとした不思議な感覚が残る。 俺の体はすぐに反応する。彼が何を言いたいのか、何をしたいのか、その仕草だけで手に取るようにわかってしまう。 「……仲直りねぇ」 そしてどういうわけか、つい彼に意地悪したくなってしまう。 「どうしよっかなぁ」 言葉とは裏腹に、腰を擦り付けながら、できる限り色っぽく、熱っぽく囁いてみる。 けれど。 「……っ、ふふ」 ダメだ、笑っちゃう。 自分に色気があるなんてこれっぽっちも思ったことないから、なぜか色気で迫ろうとしてる今の自分が面白くてしょうがない。

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