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第129話
「寒くないよ、大丈夫」
隣に寄り添って来た彼を抱き寄せるみたいに寄り添う。
「お前がいるからあったかいよ」
いい匂いがする。彼の匂い。なんとも例えられないけど、俺を安心させてくれる優しい匂い。
鼻をすんすん動かして嗅いでいると笑われた。
「子犬みたいだ」
「子犬じゃあねぇよ、こんなおっさん捕まえて」
「いいや、十分愛らしい」
何百頭も犬飼ってる奴が言うもんだから、本当にそうなのかもと思っちゃう。子犬みたいって言いながら、彼は俺のことを猫可愛がりする。
自宅ベッドルームみたいに、ゆったりした動作で俺の首筋に頭を埋めて、そのまま唇を押し当ててくる。
「ん……」
慣れた感触。飽きるとかそういうことじゃなく、体に馴染んでいて、自分の体じゃないのに自分の体の一部みたいな感覚っていうか。なんかうまく説明はできないけど。
「ハニー、愛している」
そのとき彼が言った愛しているって言葉は、なんかいつもと重みが違う感じがした。
「愛している、これからもずっと一緒だ」
ちゃんと確かめるみたいな、自分に言い聞かせるみたいな。
彼を不安にさせてしまっているのは間違い無くアイツに関する一連のことだと思うけれど、隙を作ってしまった自分の行いも悔やまれる。
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