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第132話
いつも優しくされてるのに、これ以上優しくされたらどうしたらいいんだろう。溶けちゃうんじゃないか?
「十分だよ、いつも通りで大丈夫」
つい笑いながら伝える。彼はちょっと眠そうに表情を蕩けさせて、そのまま俺に抱きついてきた。
「お前は優しいな、いつも通りで受け入れてくれるのか」
「何を優しくしたいのかわかんないけど、いつも優しいじゃん」
「そう言ってくれると嬉しいな」
でもたしかに、なんかいつもよりゆったりした雰囲気かも、なんてことも思う。王子に引っ掻き回されて、一度ほつれそうになった糸を、一緒に少しずつ修復していく途中みたいな。いつもと違うとしたら、そうしてお互いにまた歩み寄ってる感覚があるってことかもしれない。
「だから、いつも通りで大丈夫だよ。ちょっと乱暴になっても、ちゃんと受け止めるから」
ちゃんと目を見て伝えた。少しでも彼を安心させたくて。首に腕を回してしがみつくみたい抱きつくと、彼の片手が俺の服の裾を捲り上げた。
「ん……」
自然と鼻の奥から抜けるような声が漏れる。少し伸びをしながら彼の腕の中でもがくと、彼はそれすら惜しむみたいに、俺の体を大きな手でなぞった。
指先から脇腹まで、優しく丁寧に、肌に感触を残すみたいに。
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