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第145話

「ほら、入っていく。ほぐれてきたな」 まるでマジシャンがマジックを披露するみたいに、見せつけながら得意げに指を出し入れしている。 「もぉ、趣味悪……」 苦しいのもあってそのくらいのことしか言えない。それも絞り出すみたいに言うことしかできない。 彼は俺の股の間でにんまり笑っていた。 「何を言っているんだ、こんなに可愛らしい姿をしているというのに」 「可愛くねぇって」 「本当に、俺を興奮させるための体という感じだな」 「っ、そう、かよ」 恥ずかしいけど、彼が満足してくれるならそれでいい。 改まって言われたことはないから、彼が気づいているかどうかはわからないけど、俺は俺なりに彼のために体のメンテナンスはしているつもりで。 ジムで鍛えたり食べ物気をつけたり、ちょっと女っぽいけどボディソープとかシャンプーとか、香りがいいやつに変えてみたり。 彼が触れた時に不快に思わないように、それなりに気をつかってるつもりだけど、今この瞬間にも、その努力が多少報われているといいな。 「あぁ、愛している。お前と共にいられるだけで十分幸せなのに、こんなに愛らしい姿を見せてくれるなんて、俺は本当に幸せ者だ」 自己満足だったとしても、彼が喜ぶ顔が見られるならそれでいいわけだし。

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