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第164話
「一昨日きやがれってんだ」
江戸っ子みたいなことを思いっきり日本語で言いながら、彼に抱きついてその背中を見送る。
ちょっと悪かったかなとは思ったけど、だからってそう簡単に俺と彼との間に入り込めると思わないでもらいたい。
あいつがどういうつもりで近づいてきたのか、はっきりとは聞かなかったけどなんとなく察してはいた。なんとなく濁したまま突き放したほうが、多分あいつとしても気の迷いみたいなことでこの話を終わらすことができるだろう。なんて。
「ハニー……」
俺の一連の行動になのか、彼は目をまん丸くしていた。
「あぁ、ごめんいきなり。ああでもしないとずっとつきまとわれそうだったから」
パッと離れると、彼はなんだか目をキラキラさせていた。
「カッコよかったなぁ、あんなあしらい方をするとは」
「……はぁ」
なんか変なところを感心されている。
「俺は男を抱いても抱かれたことはない。だが、お前になら抱かれても良い!」
しまいにそんなこと言い始める。こんなところに悪影響が出るとは思わなかった。
「間違っても抱かねぇから心配すんな」
ため息に絡めて言って、この話は無理やり終わりにしたのだった。
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