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第165話

帰る日。 丸々1週間過ごした部屋ともお別れして、空港に送ってもらうためにホテルロビーで待機していた。 「すまないハニー、例の友人に別れを告げてくる。もうしばらく会うことがないから、待っていてくれないか。出発までには戻る」 部屋を出るとき、彼は本当に申し訳なさそうな顔をして俺に言った。出発は何時とは聞いていないけれど、飛行機の搭乗時間まであと半日近くある。早めに行って、空港のラウンジやバーでゆっくりしようか、なんて話していたところだった。 まぁあの王子様に付きまとわれることもないだろうし、もう帰るだけだし、せっかくの友達との交流を無下にするのも悪いなと思って、いいよと返した。 (結局、その友達とかいうのに会わせてもらえなかったな) もしかして、昔付き合ってた奴とかだったりして。 そこだけちょっとモヤッとしたけど、まぁいい。 人の行き交うロビーの本当に目立たない隅っこの長椅子に腰掛ける。スマホを眺めながら、滞在中に撮った写真を整理することにした。庭で連写しちゃった写真も、そのまま消さずに取ってある。それも思い出ということで。 なぜか自然と笑ったりため息をついたりしてしまって、今回の旅も結構内容が濃かったんだなって感じさせられた。

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