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第167話

「生憎ですが、ここで夫を待ってるんです。ここを離れるわけにはいきません」 そのまま伝える。おっちゃんは表情を変えず、軽く頷くだけだった。 「ご安心ください、ご主人様より仰せつかっております」 「はぁ?」 全然話が読めない。あいつから仰せつかってるってどういうことだ? (あぁ、もしかして) その知り合いと話が長引くからとか?待ってる間暇だからどっか案内してやってくれって言われたとか? このシチュエーションで合点がいくことが、そのくらいしか思いつかない。 「んー、わかりました」 腑に落ちないけど、城付きの執事みたいなこのおっちゃんが、別に嘘ついてるわけでもないだろうし、従うことにした。結構ですって言ったところで、おっちゃんは引き下がらなそうだったから。 俺の憶測が事実だとしたら、こうしておっちゃんに従っていること自体、モヤモヤを増幅させることだと思う。 彼も俺を思ってくれてのことだと思うし、憶測は憶測のままにしておきたい。 「どこ行くんすか?」 荷物もフロントで預かるというので、完全に手ぶらでおっちゃんの後についた。 城を出て、広い中庭に出る。おっちゃんは足早に、時々こっちを振り返りながら歩いていく。

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