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第170話
背の高い扉のノブを握る。石なのか鉄なのかわかんないけど、重くてどっしりした縦長のノブだった。伝説の剣でも握ったみたいな変な高揚感と恐ろしさがある。
扉の重厚感もあってさぞ重かろうと思ったけど、ノブは軽くて、片手で簡単に開くことができた。
ゆっくりと引く。隙間から見えたのは、薄暗い中に光が差し込む、広くて深い教会の中だった。差し込む光に目がいって、中が余計に暗く見える。
「え、なに……」
式の時も感じた厳かな雰囲気。扉を開いた音が全体に反響して、静けさを強調してる。
目が慣れてきた。
だから見えた。
教会の一番奥、説教壇の前にいる、誰かの姿。
「……は」
白い服を着ていて、背が高くて、スキンヘッドで。
その背格好は、まさしく俺がよく知っている人で。
「あ……」
嘘だろ。
鳥肌が立った。
この場所で、あの格好で、あそこに立っているということは。
これがどういう状況なのか、一瞬のうちに頭の中がかき回されて整理される。そして、すぐに理解した。
「ハニーちゃん」
驚きすぎて足がすくんで動けないところに、声をかけられる。びっくりして体が震えると、びっくりさせてごめんなさいね、なんて言われる。
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