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第174話
ドラァグクイーンだったシェフのことだから、その辺のセンスは間違い無いんだろうけど、ものっすごいメイク施されたらどうしようという一抹の不安が過ぎる。
「安心して、ちゃんとタキシードに似合うようにするから!」
見抜かれたのかなんなのか、シェフは張り切っていた。やっとこの場のことをきちんと理解できたばかりなのに、話の展開が早くてちょっと頭がクラクラする。
「ん、まぁ、わかった、行ってくる」
無理やり飲み込んで、一度彼から離れて、バージンロードを引き返した。
シェフはとにかく楽しそうで、こういうキラキラした場面でちゃんと楽しめる性格がちょっと羨ましい。俺はどうしても気後れしちゃうから。
なんて、この場の主役をもらったっていうのに、我ながらなんて贅沢なことを思っているんだろう。
「ハニーちゃんは肌が綺麗ねぇ、あたしは若い時にいっぱい化粧したから、ケアしたけどどうしても素肌があんまり綺麗じゃ無いのよねぇ」
教会の奥の方、特設のメイクルームで髪をスタイリングしてくれながらそんなことを言っていたけど、そこら辺の女より綺麗な肌をしてると思う。
「はい、完成!」
少し長いバサバサの髪を自然にまとめてくれた。白いタキシードは、彼が着ていたものとお揃いだった。
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