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第177話

「さぁ、改めて、式を始めよう」 公式な式とはいかなかったが、と彼が苦笑する。 「何言ってんだよ、充分だよ」 「だが、どうしても急ごしらえだからな」 「本当に充分。式なんか挙げられると思ってなかったんだから」 挙げたいとも思ってなかったはずなのに、いざこうしてお膳立てされると、ちょっと浮き足立っちゃうから不思議だ。 気づけば、神父だか牧師だか、生えてきたみたいに説教壇の前にいる。 「牧師だ」 彼から紹介を受けて、つい軽く会釈したけど、彫りの深い顔した牧師は眉ひとつ動かさない。 「お2人とも、前を向いてください」 仕事は粛々とこなす方らしい。 軽く咳払いしながら、俺と彼は並んで説教壇の前に立った。 (ああ、いよいよか) 招待客はたったの3人。なのに緊張してきた。でも、教会の中の空気は隅々まで優しい。 あなたは、この者を妻として末永く愛することを誓いますか? あなたは、この者を夫として末永く愛することを誓いますか? 人の結婚式で聞いたセリフを、まさか自分のために牧師が言ってくれる日が来ようなんて、思ったこともなかった。 「はい、誓います」 2人して、つっかえることもなく、はっきりした声で答えていた。

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