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光射す午後に18

「お疲れ様。わざわざこちらに寄らせてしまってすまないね」 樹はほっそりした身体を白の丈が長めのジャケットで包み、穏やかに微笑んだ。 「大丈夫。やっぱり彼、何も答えない?」 「ああ。頑固だよ。君以外には絶対に話さないの一点張りだ」 「身体の方は」 「順調だよ。もう薬の影響はほとんどなくなっている。タチの悪い強い麻薬を使われてなかったのが幸いしたね」 「そう。……よかった」 月城は樹が手に提げていたボストンバッグを受け取り、突き当たりの病室のドアを開けた。 樹を先に部屋へと通し、ドアを閉めると 「和臣くん。樹くんが来たよ」 ベッドにいるはずの和臣に声を掛ける。 和臣はベッドから降りて、窓の近くの椅子に座っていた。声を掛けるとこちらをじっと見る。 樹はゆっくりと彼に近づいて行くと 「こんにちは。和臣くん。気分はどう?」 和臣は目の前に来た樹を見上げて 「まあまあです。ここにずっといると、することがなくて退屈だけど」 「そう。元気そうで何よりだ。そちらに座ってもいい?」 言いながら、もう一脚の椅子に向かおうとした樹の腕を、和臣は腰を浮かしながら掴んだ。 飲み物の用意をしていた月城は、ハッとして樹に駆け寄った。 「いい。大丈夫」 2人の間に割って入ろうとすると、樹は微笑みながら手で制し、黙って和臣を見下ろす。 「ふーん。あんたって本当に男なんだな。細いけど女の手首じゃないや」 和臣の言葉に樹はふふっと笑って 「そう。僕は女みたいに見える?」 「女っていうより性別不明」 和臣は鼻を鳴らして立ち上がると、手首は掴んだままで樹に顔を寄せた。 「巧っておっさんから、あんたの名前はしょっちゅう聞かされてた。あんたもあのおっさんのおもちゃだったんだよね?」 「和臣くんっ」 堪らず、月城が声をあげると、樹はこちらを見てゆっくりと首を横に振り 「気遣わなくていいよ。和臣くん、君の質問に僕は何でも答えるよ。だから君も、本当のことを話してくれる?」 樹とさほど変わらない身長の和臣が、手首を掴んだままで、更に樹に顔を寄せる。 「あんたが質問に答えるなら、俺も話す」 「わかった。それで、話はこのままでするの?」 樹が微笑んで首を傾げると、和臣はニコリともせずに掴んだ両手首を左右に開き、自分の方へとぐいっと引き寄せ 「キスしてみてよ。濃いヤツ」 樹は意表をつかれ目を見張った。 「キス?」 「そ。濃厚なやつ」 「どうして?」 「どうしても」

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