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月の光・星の光29

「そうか……。夢じゃないんだな。樹……俺は……」 「大丈夫」 手首を掴む薫の指から力が抜けていく。 「樹……俺は、今度こそ……おまえ……と」 呂律の回らない言葉は、最後はよく聞き取れなかった。糸が切れたように薫はまた深い眠りに落ちていく。 樹は、堪らなくなって、薫の手をぎゅっと握った。 「にいさん、眠って。何も心配しないでいいから。僕が、にいさんを、守るから」 ぐっすりと寝入ってしまった薫の少し赤い頬を、樹は両手でそっと包み込む。 覆いかぶさり、じっと見下ろした。 滲む涙が薫の顔に零れ落ちないように、きゅっと目を細める。 好きになってはいけない人だけど、どうしても好きにならずにはいられなかった。 「ごめんね。にいさん……。好きになって、ごめんなさい……」 ゆっくりと顔を近づけ、少し厚めの男らしい唇にキスを落とそうとして、樹はぴたっと動きを止めた。そのまま顔をズラして、薫の額にそっと……口づけを落とす。 堪えきれない涙が零れ落ちそうになって、樹は慌てて上を向いた。 「まだ眠ってんの?」 和臣が遠慮がちにカーテンの隙間から顔を覗かせる。 結局、一睡も出来ずに朝を迎えてしまった。 「うん」 樹は強ばってしまった両手両足を軽く伸ばすと、薫の寝顔を確認してから、椅子から立ち上がった。 足音を立てないように、そっと和臣の方に向かう。 「目、真っ赤だ。あんた……寝てないだろ」 和臣の身体を押し返すようにして、カーテンの向こうに出ると、樹は窓際に歩いて行った。 朝の柔らかい陽射しが、窓から射し込んでいる。 「ちょっと寝たよ。大丈夫」 和臣は自分のベッドに腰をおろすと 「嘘つけ。寝てない。看護師来るまでまだ少し時間あるからさ、ここで、横になれば?」 和臣はそう言って、促すように布団をパシパシと叩く。 樹は振り返り、にこっと笑って 「大丈夫。君こそ、まだ横になってたらいい」 「今日、退院出来たらさ、俺、あんたのマンションに行くんだろ?」 樹は窓際から離れて、和臣の隣に少し間を空けて腰をおろすと 「僕のマンションは……もうあいつら調べてるかもしれないね」 「俺が調べて気づいたくらいだもんな。あいつら、待ち伏せしてるかも」 樹は頷くと 「こっちでも、あそこは監視させてる。怪しいのがうろついてるって、報告もらってるんだ」 和臣は舌打ちして 「しつっこいな。あの野郎……」 「君に、異常に執着してるみたいだね」 和臣は荒いため息を吐き出すと、天井を仰いだ。 「あいつは変態なんだよ。頭、おかしいのさ」

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