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月の光・星の光44

「あんたはなんで、あいつの面倒見てるの?養子だから?」 胸に沸き起こる怒りに、声が暗く淀む。 月城は少し首を傾げて 「うん。……そうだね」 「樹さんの父親は、あいつの兄貴なんだろ?だったら押し付けりゃいいじゃん、あんな奴の面倒なんか。養子縁組だって解消しちゃえばいいだろっ」 月城は目を伏せ、黙り込んだ。 なんだか無性に腹が立つ。 巧のやったことは犯罪だ。 他に頼ることも出来ない身寄りのない子どもを、騙して自分の所有物にしたのだ。 許されることじゃない。 樹だって自分だって、あいつにはおもちゃにされた。みんな、あいつに人生を狂わされたのだ。 「お人好し過ぎるよ、月城さん」 つい声を荒らげると、隣で樹がもぞもぞと身動ぎした。月城は伏せていた目をあげ、こちらをじっと見据えると 「お人好しじゃないよ、僕は。多分、どちらかと言うと人が悪いんだ」 「……?それ、どういう意味」 月城は視線を合わせたままで、両手をテーブルの上でゆっくりと組んで 「僕の中に渦巻く感情を、君にわかってもらうのは難しいよね。僕が今、巧さんにしていることは、復讐なのかもしれないって……自分で思うんだ」 和臣は目を見開いた。 「……復讐……?」 月城は組んだ手の上に顎を乗せて 「うん。復讐。憎しみとか恨みとか、僕は一時期そういう強い感情をなくしていたことがある。愛情も……かな。嬉しい悲しいといった感情も、僕にはよく分からない時があった」 月城はこちらに目を合わせているように見えて、その視線はどこか遠くを見ている気がする。和臣は唇をぎゅっと引き結んだ。 「あまりにも長い時間、僕は巧さんと一緒にいたから。2人の間には他の誰も介在しなかったから。僕はきっと、そのことに慣れてしまっていたんだね。巧さんはたしかに、僕にケダモノじみた欲望を向けてきた。最初はショックだったし、死にものぐるいで抵抗もしたよ。信じていた人に裏切られた絶望で、毎日泣いていた。でも巧さんは、僕にそのことを強要する以外は、以前と変わらず優しかったんだ。僕は混乱した。僕を無理やり抱く彼と普段の彼は、まるで別人だった。もう1人、違う彼がいるのかと思うほどに。痛みと恐怖とショックで泣きじゃくる僕を、優しく抱き締めて慰めてくれるのも彼だった」 和臣は震える指先でグラスを強く握った。 あの男のそういう変わり身の激しさには、自分も覚えがある。 「大丈夫?和臣くん」 不意に、樹の手が伸びてきて、腕をそっと揺すられた。和臣は思わずビクッとして、樹に視線を向けた。 「顔色、悪い。話やめて少し休む?」

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