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Sunday
「お疲れ様です。日曜ですが連絡が必要になりました」
『かまわない。急げと言ったのは私だ』
ロウは次長が疑問をもたないように台本を練ってから電話をした。尤もらしいことを並べて自分の思惑通りに物事が運ぶようにするために必要な筋書き。
「対象の居場所がわかりました」
『なんだと?昨日の今日でもう突き止めたのか』
「ええ、シリアルキラーはもっと手ごわい」
『そうだろうな。滝田は『ボーダレス』が確保しているのか?であればそこは本拠地か』
「いえ。隠れ家の一つでしょう。警察が追っている重要参考人を本拠地に置くとは思えません。住宅街の一軒家です」
『踏み込むのはいつだ?応援の手配をする』
「応援は必要ありません。見張りは交代しながら随時3名。今日牧野は姿を見せていません。あと二日ばかり張り込みます」
『寝かせる理由は?』
「対象は抵抗や逃亡は無理です。ヒートでは不可能だからです」
『ヒート?確かなのか?』
「間違いありません。対象は外から入れない特殊な部屋にいると思われます。対象と接触できず、何事も起こらない退屈な時間を3日過ごせば見張りはダレて隙が生まれる。そのタイミングで慎重に踏み込むほうが理にかなっています」
『うむ』
「応援を呼べば秘密が漏れる可能性が生まれます。それに対象がヒートであれば面倒が起こる」
『君は大丈夫なのか?』
「ご存知の通りヒート抵抗値をクリアしているから私は捜査官になれました」
『愚問だったな』
「それに警察が追っている重要参考人を特捜が奪ったとなればややこしいことになる。担当の刑事は簡単に引き下がるタイプではありません」
『うむ』
「私一人で忍び込み、見張りの動きを奪い対象を連れ出す。確認ですがヒットの証拠レポートは必要ですか?」
『要望されていない』
「ボディ の写真が必要であれば」
『必要ない。物証は極力残さないようにとのことだった。君の報告があれば十分。どう考えても君が滝田隆俊に肩入れするとは思えないからな』
「そのとおりです。理由がありません。あくまでも任務です」
『結構。ではその筋書き通りに進めてくれ。滝田隆俊を確保したら必ず連絡するように。必ずだ』
「はい。必ず」
『いい報告を待っている』
電話は首尾よく終わった。証拠レポートが必要なくなりロウは自分に運があると計画に自信を持った。
対象の居場所周辺を十分観察し、タイミングを見計らって住居に侵入。中にいる人間の行動力を奪い対象と対峙する。対象自らパニックルームを開けるように仕向けなければならないが、その方法は考えたし上手くいくだろう。
対象を確保した後、ドアを開けた「理由」を実行する。実行には時間が必要だ。ロウはその時間を捻り出し、次長と命令を出した対象の父親を納得させる。ミッションは完遂扱いになり秘密は存在しなかったことになるだろう。
どういう結末を迎えるのかロウにはわからない。何故なら結末に導くのは誰でもない「滝田隆俊」だからだ。
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