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Wednesday:2
テーブルの上にはアイスティーとサンドイッチが置かれている。ここ数日ろくなものを口にしていなかった隆俊はかぶりついた。レタスの食感とローストポークのジューシーさが抜群のサンドイッチを平らげアイスティーをごくごく飲む。身体を洗い美味しいものを食べ冷たい飲み物を飲む。こんな単純なことで「生きていてよかった」と思えるのは幸せなことなのだろうか。こんなちっぽけな幸せしかない自分は不幸とも言える。
「君がこれからどうするのか決めるために必要なことを伝える」
「……はい」
男はテーブルの上に手帳を置いた。休憩室で見た刑事の手帳とはまったく違う。
「特捜……何で特捜が俺を?」
「私は君を探し殺すよう命令された」
「……え」
「私は任務を受けた時から君に選ばせるつもりだった。生きるのなら手立てがある。死ぬというなら苦しみなく逝かせることができる」
「誰がそんな……」
「命じた人間の名前は知らないが、君の父親だ。警察の上層部にいる」
隆俊は愕然とした。そのショックが身体を小刻みに揺らし、胸がむかつき込み上げるものを飲み下した。それなのに急に笑いたい衝動に突き動かされる。母親と父親に捨てられるとはどういうことだ。俺の存在価値って?生まれた意味は?俺のことを心配する奴はいないのか!い・な・い・のか!!
ロウは涙を流しながら笑い続ける隆俊を何も言わず見詰めた。隆俊の心情は理解できる。母親は利用目的で産み、父親は始末することを決めた。ロウにはドクがいたから耐えられたのだ。「創られた」存在である自分に価値があると言い続けてくれたからだ。だが隆俊には誰もいない。
ロウはテーブルの向かい側にティッシュの箱を押した。キョトンとした隆俊は、ロウが目元から頬を滑らせた人差し指の動きで自分が泣いていることを知り顔が歪む。
「くそ!ふ……く……そ……」
リビングには隆俊の嗚咽と鼻をすする音、聞き取れない呟き以外の音はない。ロウはじっと待った。隆俊が感情に翻弄されて疲れたあと、話ができるようになるまで。
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