お互いを知るために言葉は必要ない。突き動かされる衝動を伝えるのは指と手のひら、そして唇と舌。犬のようにザラついたロウの舌は隆俊の肌を泡立たせた。熱い手のひらが冷えた身体を熱に変える。 　シーツに抑えつけられ本能的な恐怖のせいで逃げをうつ隆俊の両肩を掴み、咥内を蹂躙して空気を奪う。ロウを捉えようと必死で舌を絡めているうちに隆俊の恐怖は興奮に変化した。 　躍動感のある筋肉質の腕に必死でしがみつき身体の奥でのたうちまわる固まりを吐き出そうともがいた。ロウに根元を握られ出口を無くした欲が逆流する。胸の尖りを舐められ背中が仰け反り嬌声が漏れた。 「あ、だめ。イキたい！離して！」 　懇願は聞き入れてもらえない。離すどころか指先が後孔にツプリと差し込まれた。ぐちゅっという水音ですでに濡れそぼっていることを知り羞恥心が興奮を上回った。 「いつもは……こんなんじゃない……あっ！」 「いつもの平凡な男と比べるな」 　根元を拘束したままロウの熱い咥内に包まれ内腿の筋肉がひきつった。たっぷりの唾液とざらざらした長い舌は容赦がない。握りを緩められ昇ろうとすると締められる。何度も翻弄され隆俊の息はあがり目が虚ろにロウを捉えている。何度強請っても貰えない絶頂が欲しくて必死に手をのばすがロウに阻まれた。 「も、無理……お願い」 　ロウの指はすでに三本入り込み中で暴れている。快楽のポイントを同時に責められ隆俊はこのままでは気が狂ってしまうと思った。この男に喰われてしまう。 『特別な男を手に入れろ』 　まただ、また囁きが聞こえる。あんたは誰だ？もう一人の俺なのか？ 　ロウが深く飲み込み喉奥に先端が触れたと同時に根元の拘束が解かれた。 「ああああ！！！！」 　波に押し出されるように身体の一部が皮膚を突き破り噴き出す。両足はビクビクと痙攣し思い通りにならない。息をしたいのにうまくいかず肩を揺らして空気を吸い込む。 「甘い」 　吐精を一滴残らず飲み込んだロウは隆俊を見下ろしながら呟いた。青く光る瞳を見た時、隆俊は強い想いにかられた。取り込みたい、この男を取り込みたい！ 　ロウの腰に両腕を回し躊躇なくそそり勃つ欲望を飲み込んだ。唾液を咥内に溜め舌を絡ませ舐め上げる。先端をぐるりと愛撫し唇と舌で裏筋を上下に滑らせると、漏れ出た唾液が下に垂れ陰嚢に粘りついた。 　口淫を施しながら根元を扱くと勃立が硬度を増した。ロウの両手は隆俊の頭を掴みより深く奥に侵入するために腰が揺れる。鼻で呼吸することに集中しながら喉奥にロウを導く。深く激しい突き込みが数回繰り返された時、熱が迸った。味わうことができないくらい深い場所に注がれた白濁が喉を落ちていく。 　まだ、足りない。これだけでは……まだ足りない。 　隆俊は仰向けになり両膝を折って立てた。自ら粘液が溢れ出す後孔を指で広げる。 「ここに……欲しい」 　透明の粘液と赤く充血した体内の入り口。それはロウを突き動かすイメージと同じだった。温かく湯気をあげている内臓が目の前にある。 　腹の皮を食い破る代わりに、ロウは自らを内蔵に突き入れた。