どこから全てが快感になったのかもう覚えていない。気がつくとダンに触れられた場所は熱を持ち、身体中を支配していた。 膝の上で抱きしめたジョアンの反応を細やかに拾いながら、ダンの指は孔の中で踊ってジョアンを溶かしてゆく。 「ダン……ダン！　もう、いいから早くっ、あっ……」 　背後にいるダンに凭れていたジョアンの背がぐっとしなり、急かすように腰を突き出した。背中に当たっていたダンの雄はとうに勃ち上がりぬらぬらと肌を湿らせている。 発情期ほどではないものの、ジョアンの身体の奥で分泌された粘液は後孔からとろとろと零れ、内側は誘うように蠕動を始めていた。中から抜かれた指先に絡みつく滴が光を反射して糸を引き、すぐにぷつりと途切れ、シーツに小さな染みを作って消えた。 　もう片方の手の中で張り詰めて刺激を待っていたジョアンの中心をダンが数回扱き上げると細い腰が揺れる。 「ああっ、あッ......」 　軽やかな声で啼いてジョアンはあっさりと達した。 　それを見届けたダンは、脱力した身体を腹這いにさせてジョアンの腰を持ち上げた。両腕の上に突っ伏し、吐精の余韻と挿入への期待でジョアンの呼吸は早くなる。 　上下する背中を見ながら、ダンは浅く息を吐いて脈打つ猛りを誘う柔らかいそこに先をあてがった。肩越しに振り返るジョアンの甘く潤んだ瞳に吸い込まれ、上半身を重ねて唇を合わせる。そのまま両手で掴んでいる細い腰に向かって下半身を推し進めた。荒々しさを纏った雄の塊が腹の中に入り込む感覚にジョアンの芯が震える。塞がれた口の中で舌が動いて、歓喜の抗いを唱えていた。 　入り口で申し訳程度の抵抗をした肉壁は、中では脈打って奥へと誘(いざな)っていた。硬く滾るダンの欲望が身体に捻じ込まれていった。 　拓かれたジョアンの身体は、口から零れる吐息と共に獣人であるダンを受け入れた。 　眠ることのできない晩を過ごしたジョアンの体力は落ちている。掌でそれを感じながら、ダンは一気に貫きたい衝動に耐えていた。 　浅いところを押し開き、少し引いてはまた抉り込んでゆく。 「……ん、ふ……あ、あッ……」 　緩い動きに合わせて身体に生まれる奔流に、ジョアンは全ての感覚を任せていた。心は満たされた。でもさっきまで自分の背中に押し当てられていたダンのそれはこんなものではなかった筈だ。浅いところを突かれ善がりながらも、満たされない奥が寂しくて泣きだしそうだった。 「ダンッ！　もっと……足りない！」 「ッ！　そんなことを言うな」 それでも強請るように首を左右に振り、ジョアンが絞り出すように言った。 「……いいから、ダン」 　声にならない呻きと共に、ダンの手がジョアンの腕を後ろからつかんだ。 　あ、と思うと身体が引き起こされた。そのまま華奢な身体は後ろで膝を折り曲げていたダンの身体の上に勢いよく腰を下ろすことになった。柔らかな内臓が血肉の滾ったダンの衝動を一気の飲みこんだ。 「あっ！……はぁ、んッ」 　さっきまで浅いところを押し広げていたものが腹の奥深くに侵入してゆく感覚が身体を貫く。追いかけるようにダンが寸暇なく下から突き上げた。入口から奥に向かって丸みを帯びた先端が内壁を擦り上げた。そこから引き出される快感に、ジョアンはのけ反って言葉にならない声を上げて高みに上り詰めてゆく。 　目を閉じていても明滅する視界にジョアンはゆっくりと意識を沈ませていった。