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第2話
リビングの照度を落として、ラグに直接寝転んだ。足元に相方が胡坐をかく。
「山本さんち、お友達の下に赤ちゃんがいるんだよ。
おっぱいいっぱい見ちゃったんだよな、きっと。あそこはデッカいおっぱい4つ? 6つ?」
もっと物が分かるようになってからなら違ったんだろう。今の年齢ではまだまだ大人の顔色なんか構わないし、浮かんでしまった『なんで?』『どうして?』が我慢できない。
「変に大人に気を遣って、黙られるより良かったんじゃない? 素直に思ったことを言えるってことだし、元々俺たちも誤魔化さずに答えるつもりでいたことだ」
なぜウチのお父さんの爪は鋭いのか。
なぜウチのお母さんのおっぱいが平らなのか。
胸を張って説明すればいいのだ。頭では分かっている
「ペタンコって言われたってさ、産まれてしばらくは乳出たし、ちゃんと飲ませてたんだぜ。
ただ、女性ほど乳房が膨らむわけないし、ネコ科の血のせいで離乳が早いから、あいつら覚えていないだろうな」
「あんな可愛らしく飲んでいたのにな。
乳首咥えていないと眠らなくて、両脇に抱えて飲ませながら寝かせていたじゃないか。
……どっかに写真撮ったのあったよな? 忘れないようにリビングにでも飾ろう」
「やめろよ、なんで俺の半裸写真を壁に飾る?
恥ずかしいだろうがっ」
「海水浴の写真だって上半身裸だろ。何が違うの?」
「授乳はなんかヤダよう!
理解しろよそこんところは」
リビングの壁面は、家族の思い出の写真が飾られている。当たり前だがどの写真も全員男。きっとよそのほとんどの家族写真は男女混合なのだろう。
「よその家と比べたら、ウチだけが何か変だと思ったかなあ……」
「俺、もしかして怖がられてる? お父さんの目つきが怖いって言われたら可哀想だからって、サングラスをかけてお迎えに行ったのが逆効果だったのかなあ」
「どう見ても成人男性の形 なのに、産んだ意地で『お母さん』って呼ばせていたのがいけなかったのかなあ」
はあああああ。湿ったため息がこぼれる。
子供の口から拒絶の言葉が出た訳ではない。今日のところは単純に疑問がたくさん生まれ、遠慮なく聞いてきただけ。いつもと同じ、大好きなお父さんお母さんに甘えるだけ甘えて、遊び疲れて眠った。それだけ。何も変わらない。
よそはよそ。ウチはウチ。解っているのに。男ふたり親なんてオカシイと思われるのは嫌で、引け目を感じて気弱になる。
「ま、とりあえず飲も?」
「あれ、酒飲む? 珍しい……」
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