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第3話

「だって、もう大丈夫なんじゃない?」    子供たちがもっと小さいうちは『夜中に熱でも出したらどうしよう、すぐに病院に行けるように、今は酔うわけにはいかない』って気が張って、ずっと家での飲酒は避けていた。  都合の悪い日に限って何かが起きるんだよな、子供って。  いつの間にか食事もひとりで摂れるし、オムツも卒業した。友達の家で眠れなくて迎えに来てって言うのかと思ったのに、ケロリとしていた。きっともっと手がかからなくなっていく。  もう"大丈夫"なのか……。  いきなり親離れされるのも寂し過ぎる。今は遠慮なしで疑問をぶつけるくらい甘えてくれていて良かった。  出来ることなら、今後は親としての尊厳を植え付けなくては。せっかく男親が二人いるのだ、よそとは違う手本となるカッコいい親でいたいじゃないか。   「そうだ。来月、運動会があるんだよ」   「そうか。はじめての運動会か!」   「お父さん、チーター獣人なんだから足の速さなら負けないじゃないか。今度の運動会で、ぶっちぎりで優勝しよう!」   「お母さん、趣味のガンプラで鍛えた手先の器用さと情熱は、他のどんな人間にも負けないじゃないか。  デコ弁だよ、とっておきの! あいつらが大好きなカッコいいキャラクターの弁当、作ろうよ!」    男親の長所を最大限に活かして、いいところを見せつけてやらなくちゃ!  梅酒の氷を鳴らして乾杯した。飲む、とは言っても結局及び腰になってしまって、薄いうすい、氷たっぷりの梅酒の水割り。   「そうと決まったら、今夜からストレッチしなきゃな! 本気の走りを見せてやる」   「そうと決まったら、今夜から新番組のヒーローの画像漁らなきゃな! モブまで全キャラ総動員させてやる」      俺たちはどの夫婦とも違う。滅多に出逢えないという奇跡の運命の番。だからきっと大丈夫!  子供たちだって、この親となら大丈夫だって思えたから、こうして生まれてきて一緒にいるんだろう?  俺たちは、どこよりもカッコいい家族だ。  決意表明の熱い握手を交わし、グラスを合わせる。ほんのりとした梅酒の香りが、暖かなリビングを包んだ。

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