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第8話

触れるだけでおかしくなりそうだ。 止めないとダメだと思うのに勝手に身体は飯田奏を求めてしまう。 「叶斗(かなと)せ・・ん・・ぱい。」 飯田奏が呼ぶ名前に驚き俺はシャツの中に入れていた手の動きを止めた。 叶斗先輩って言ったよな・・・。 それは俺の兄貴の名前で兄貴の名前を呼びながらポロポロと泣いている。 なんだよ! どうして泣きながら兄貴の名前を呼ぶんだよ!! 飯田奏の甘い匂いと兄貴への嫉妬に俺は目の前にいる身体を強張らせて震えている飯田奏をムチャクチャにしてやりたくなった。 兄貴の前ではキラキラと輝く太陽のような笑顔を見せているのに俺の前では冷たい雨の様に静かに泣いている。 俺には泣き顔しか見せないのか? どうしたらお前は笑ってくれるんだ?

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