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第10話
「ちがっ・・う。」
俺の背中に腕を回してギュッと抱き付きながら飯田奏は弱々しく呟いた。
違うと言ったのか?
「違うのか?」
「うん。」
「じゃあ、どうして叶斗先輩の名前を呼んだんだ。泣きながら呼んだろ?」
マズッた。
キツい口調で聞いてしまった。
俺の胸に顔を埋めていた飯田奏がバッと顔を上げた。
真っ赤になって口をパクパクと動かして何か言おうとしているのは分かるが全く伝わってこないが相変わらず匂いだけは濃いままだ。
「いいよ。無理に言う必要ない。それとお前がΩだと言うのは秘密にしといてやる。お前、発情期なら学校休めよ。迷惑だ。」
「じゃ・・・ない。」
「何?聞こえないんだけどハッキリ話せよ。」
最低だ・・・。
どうして俺は優しく言ってやれない?
冷たい口調で言うから目の前の飯田奏は身体を強張らせて泣き止んでいのにまた目に涙を溜めている。
最低すぎる俺。
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