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第2話
夏休み直前のある日。
期末テストも終わり、久しぶりにのんびりとしたこの時期、今日も設楽は大竹の部屋で、2人で飲んでいた。昼間はいつも通り優唯の面倒を見ながら勉強をして、夕飯を食べて、優唯が帰って、もう夜の9時。「自分の生徒とはそういう関係にならない」と言いながら、自分の生徒(しかも未成年)と平気で酒盛りをするとはどういうことだ。
酒を飲んだ大竹は無防備で、顔を赤らめて機嫌良く鼻歌を歌ったりするのだ。いつもは見せない笑顔も大盤振る舞いで、そのまま横になって寝ちゃったりするのだ。
大竹の気持ちを知らない時は、こんなことは全く自分を意識していないから出来ることだと思っていたのだが、どうやらそうではなかったらしい。大竹は素で、お互いに「好きだ」と言い交わした設楽の前でも、酔っぱらうとこうなってしまうのだ。
何の拷問ですか~~~!!!
今も目の前で「あ~、あちぃな」と胸元のボタンを外しながら、「ちょっと横になるぞ」とラグに肘をついて横たわろうとしている。
赤らんだ目元とか、広めに開けられたシャツの間から見える胸元とか、男の色気が匂い立っちゃってるよ!どうしてくれるんだよ、それ!誘ってるんですか!?それは誘ってると理解しても良いんですか!!?
だがごろりと横になった大竹にその気がないのは、もうさすがに学習した。こいつは本当にその気がないのだ。信じられない!!目の前に若くてぴちぴちであんたが好きで堪らないあんたの彼氏(うわ照れる♡)が、いつでもどうぞ状態でいるのに!!!
「あのさぁ、先生……」
「ん?」
上機嫌な顔を睨みつけるが、大竹には効果がない。酔っぱらって愉快な気持ちになっているのだ。
どうしろというのだ。こんな大竹を目の前にして、どうしろというのだ!
「あのさぁ、ムラムラするんだけど」
「ムラムラ?」
キョトンとして大竹が顔を上げる。ムカツク。マジで分かってないのか。
「あのさぁ、惚れた男が目の前で酒に酔って転がってたら、犯しても良いと思わない?」
「思わない」
「……」
何で?と小首を傾げるな~~~~~!!なんだそれ!可愛いつもりか!!チクショウ、俺も酔っぱらってるから、無性に先生が可愛く見えちゃうんだよ!!こんな、俺より10㎝も背が高くて(ちなみに俺は去年175㎝だったけど、今年は178㎝まで伸びた!まだ成長期だ!頑張れば先生の186㎝に手が届くかもしれない!!)、体格だって俺より一回りはでかくて、男の魅力ダダ流してるような先生が(落ち着け設楽、それは目の錯覚だ!)、何でこんなに可愛いく見えるんだよ。酒の力、恐ろしい!!!
「ねぇ、させてよ先生」
「何を」
「ムラムラするって言ってんでしょ」
「だから何を」
設楽は取り敢えず大竹の上に覆い被さって、唇を交えてみた。
ここまでは大丈夫なのだ。
大竹も舌を伸ばし、酒臭いキスを深めてくれる。
だがそのまま襟元に差し込んだ掌を胸に移動させようとすると────
「ダメ」
「なんで!?」
「お前は俺の生徒だから」
「今更でしょ!?」
もう何度このやりとりをしたことか。
ギィ~~~!!もうマジで生殺しなんですけど先生!!!
「ね、先生これほら、触ってみてよ」
大竹の太腿に、さっきから大竹とエッチしたくて堪らなくなっている自分の腰を押しつけてみる。さすがにコレで分からぬほどの鈍感ではないのだろう、大竹の体がびくりと跳ねた。
「ね、これ、どうしたらいいと思う?」
「……マスでも掻けば?」
マジで言ってんのかこいつ……っ!!
大竹を見れば、さすがに気まずそうに目を逸らしている。
「……」
「……」
「……分かった」
設楽が立ち上がったので、「トイレはそっちで、寝室はあっちだ」と指さす大竹を睨みつけ、ティッシュ箱を取りに行くと設楽は大竹の顔の前に腰を下ろした。
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