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第25話

瑠樹愛side 「瑠樹愛…会いたい」 兄からそんな連絡が何度もあるし 「たまには帰ってきなさい」 そう両親から連絡もあるけれど仕事を言い訳に帰らなかった。 兄の奥さんは俺と兄のことは皆には伏せているんだ。 だって幼い頃から蝶よ花よと愛でられてきたのに自慢の旦那である兄からは一番だと言われることはないなんて…その夫が実の弟に焦がれているなんてそんなの言いたくないし認めたくないだろうから。 きっとあの美しい笑顔でうまく渡り歩いているのだろう。 ある日いつものように一夜の相手を見つけるため行きつけのバーに行った。あまりこの人って相手を見つけることもできなくて店のマスターとの会話を楽しんでいた。 「ねぇ。マスター」 「何だい?」 「貴方の弟さんの元パートナーさんは幸せになれたかな?」 「うん。彼なら今とても幸せそうだよ。」 「良かったね。あの人一時期荒れてたもんね。見ててこっちが泣けちゃいそうなほどに…」 兄はその彼みたいに男を漁るようなことはなかったけれど一夜限りの相手をしてもらったときの葛藤を滲ませる瞳は兄に良く似てた。 「あれ?瑠樹愛」 「あ!空雅じゃん!久しぶり」 「うん。ここ良く来るの?」 「たまぁにね。お前は?」 「僕もたまに。待ち合わせで使ってる。ここのマスターにはお世話になったんだ」 「そっかそっか」 旧友との再会。高校時代同じ部活でこいつが主将で俺が副主将。一時期大きな怪我をして休んだこともあった。大学も同じだったのにいつしか姿を消した可愛らしい友人。よかった。元気そうだ 「最近どうしてるの?」 「ん?」 「空ちゃん!お待たせ」 「あ!八尋さん!!」 呼ばれた瞬間に花のような笑顔を見せた空雅。その先にいたのは 「…清さん?」 「君は…るぅくん」 「…」 あの荒れ果ててた彼だった。俺の知ってる姿とはまるで別人で空雅に寄り添う姿はとても幸せそうだった。マスターにちらりと目線を送るとマスターが大きく頷いた 「貴方の相手が空雅でよかった。空雅のことお願いします。本当にこいついいやつなんです」 「君たち知り合いなのかい?」 「小中高大が同じだったんです」 「そ…か…」 清さんは気まずそうに返事をした 「八尋さん!大丈夫だよ!今は僕だけなんだからそんな顔しないで。ここで出会って顔見知りなら理由なんてわかりきってるしお互い様でしょ?」 「ごめん…空ちゃん」 「でーもー!もう浮気はダメだからね!瑠樹愛がどんだけ美人さんでもだめ!わかった?」 「そんなの当たり前でしょ。るぅくん。あのときはごめんね。すっごく酷くしたんじゃないかな?俺あんま覚えてなくて…」 「あははっ!刺激的でした。俺は酷いのも好きだから!でも空雅には優しくしてね!空雅すっごく華奢だから」 「失礼だな!僕だって鍛えてるもん」 「ふふ…」 それから暫く話をして2人の帰る姿を見詰めてた 「瑠樹愛くん」 「なぁに?マスター」 「君だけを見てくれる人は必ず現れるよ。自分を大切にするんだよ?」 「マスターやさしーありがと」

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