32 / 120

第32話

瑠樹愛side ある日俺は大きな失敗をした。大口の取引先と揉めたのだ。 危うく取引終了になるところで… でもその理由を聞いてくれるものはなかった。 丁度和水さんは長期出張に出ていたし頼りの部長は入院中でいなかったから相談もできなかった。 他の先輩に相談をしようと思っても配属されたその月に白木チーフ、和水さんに次いで業績をあげたからか誰も話しを聞いてくれなくて… 揉めた理由なんて聞いてもないから知らないのに 「お前が余計なこと言わなければこんなことにはならなかったのに」 なんてことを幾人もの上司たちに言われてしまって 取引先でも罵声を浴びせられた直後だったからかなり落ち込んでしまった これまで誰にでも可愛がられてきたし何をするにも苦もなく器用にこなしてきて成功してきたから失敗したときの対処もわからないしかなり堪えた。どうしようかと途方にくれていたとき 「久米くん。話し聞いたよ。少しいいかな?」 声をかけてくれたのは外回りから帰ってきたばかりの白木さんだった。 「はい…」 この人からも叱られるのだろうか… 「どうしたの?君の働き見ていたけれど否はなかったと思うけど」 「俺…」 揉めた理由を白木さんに説明すると 「わかった。さっそく洗礼を受けたみたいだね。あそこの人ね前から結構無理難題を押し付けて来てたんだ。大丈夫。もう一度話せばわかってくれる。俺も一緒にいくから支度して」 そうして白木さんと共に再度訪れ一つずつ確認をしながら話していく。始めはとても苛立っていた先方も話していくうちに穏やかに凪いでいき結果更に新たな契約に結び付いた。 「参ったね…すごい子入ったね。白木くん。まるで君を見ているようだよ…。久米くん。さっきはすまなかった。君は何をするにも完璧な資料をあげてきてくれて仕事も早いからやり過ぎちゃった」 茶目っ気たっぷりに彼は笑った。 「これからもよろしくね。和水くんが君に引き継いだ理由がよくわかったよ。期待してる」 「はい!ありがとうございました!」 白木さんに次いで取引先を後にする。 「久米。すごいね。やっぱお前逸材だわ。俺すぐに抜かれるなぁ」 「いえ…白木さんのお陰です」 「よく頑張ったな」 そういうと白木さんは俺を撫でてくれた。その手が思ったより大きくて温かくて堰を切ったように涙が溢れだした 落ち着いて顔をあげて見た白木さんの笑顔は凄く綺麗で見惚れてしまった。 やっぱり好きだ…こんなにも好きだなんて思ったことはこれまで1度たりともない…和水さんの言う一生隣にいたいから告げないと言う理由がとてもわかった瞬間だった。 でも…俺は和水さんとは違う…どうしても欲しい…この人が欲しい…誰のものにもしたくない…同じ気持ちで俺のところに落ちてきて欲しい… ねぇ。俺はあなたを愛さずにはいられません。あなたも俺を愛してください。愛してくれますよね?

ともだちにシェアしよう!