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第43話
「先輩…すいません」
「…いや…あれが里中たちの為でも…そのときだけの偽りでも嬉しかった…少しだけ…抱き締めさせて…」
先輩が泣きそうな顔をしながら俺を抱き寄せた…
「朱夏…心配しすぎて死ぬかと思った…何もされなかったか?」
「大丈夫です。里中は送ってくれただけだし緑川はそこでばったり会っただけで…あ…こめかみにキスされたけどそれだけです」
そう言うと緑川が唇を落とした場所へキスをする。
「上書き」
「先輩…ごめんなさい。気を付けてって言われてたのに…」
「いや。今度から気を付けろよ。…とはいえ…お前が一番注意すべき相手は…俺だけどな」
気付けば床に押し倒されていた。痛くないようになのか後頭部と背中には先輩の手が添えられていた
「朱夏。あの言葉本当だから。もう他の奴は切った。瑠樹愛とはまだ話せてないけどね」
「…俺は…気持ちには答えられない…」
「うん。わかってる。でも…俺のできることはそれくらいだから。これからちゃんとお前に振り向いてもらえるように…頑張るから…」
「先輩…だめです。やっぱりだめです。今の距離がいい…それじゃダメですか?」
「…っ…」
「ごめんなさい…」
「言っただろ?長年思ってたんだからいくらでも待てるし我慢も出来るよ。このままがいいならそれでもいい。お前が俺の側にいてくれるならそれでいいよ。ごめんな」
そう言うと俺を起こしてくれた。
「痛いとこない?」
「大丈夫です。お茶でも淹れますね」
「いや。大丈夫。今日は帰るよ。じゃあな。ちゃんと戸締まりしろよ?」
「はい」
「あ!朱夏。お前が困ったとき俺利用していいからな。里中と緑川は大丈夫だと思うけどまだ他にもお前狙ってる奴いるんだから」
「ありがとうございます」
「んじゃ。お疲れ」
先輩は俺の頭を撫でると帰っていった…
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