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第45話
剣聖side
「…久米とか緑川とは会社でやってた…俺見たんです…」
あぁ…それも見てたんだ…ある意味不幸な奴だな。人の情事なんかに出会したくはないだろう。
「うん。そうだね。それは事実だね。でもねぇ1つ誤解を解くなら緑川とは実際はやってないよ。やってるように装っただけ」
瑠樹愛とは確かによくやってた。否定なんてできない。ただ緑川に関しては相談されたのだ。会社の女に付きまとわれていると。だから彼女を諦めさせるには女には興味がないことを示す必要があった。
計画を練りその女に俺と一緒にいる姿を見せてやると女は顔面蒼白にして立ち去っていきその後会社を辞めた。
「そういうこと。あの時俺しつこい相手に困ってて助けてくれたんだよ。お陰で助かった」
「久米とはしたんでしょ?」
「あぁ。それはね朱夏も知ってる。知った上で付き合ってくれてるの、ちなみに朱夏は幼馴染みみたいなもんだから過去も今も全て知ってるよ。それでも俺を選んでくれた。だから俺も目が覚めたの。俺はもう遊ばない。朱夏しか見ない。だから安心して。里中くん」
「でも…」
まだ何か言いたげな里中に緑川が告げる。
「…里中そういうことだ。諦めろ」
「は?いやだ」
「和水さんに敵うわけない。わかってるだろ?」
「それでも俺は諦めない!」
二人のいい争いを横目に見て胸に抱いた朱夏の表情をうかがう。
朱夏の考えていることは手に取るようにわかるよ?
こいつらをこちら側にこさせたくないんだろ?朱夏が特別に目を掛けていた二人だ。わからない訳じゃない。
「里中。ごめん。そういうことだから諦めてくれ。あの日は絡んですまなかった…先輩となかなか先に進めなくて少しでも妬いて欲しくてしたことだと思うんだ…俺は中学時代先輩と出会った頃からずっと…先輩しか見てない…だから…今凄く幸せなんだ…邪魔しないでくれ…俺の長い恋路を…頼む…」
また嘘つくときの癖…出てんぞ…二人のためだとわかってるけどやっぱり…きついな…
「チーフ…」
「緑川もごめん。そういうことだから」
緑川は無言だった。
「先輩…行きましょ…早く二人になりたい…」
本当に…お前はとことん俺を…でもそんなお前だって俺にとっては大切だから…
俺に腕を絡ませて背伸びをして頬にキスをする朱夏。心なしか震えてた。それに答えるように抱く力を強めた…
「悪いな。2人とも。あと。出来れば俺たちのことや久米のこと秘密にしておいて欲しい。勝手で悪いんだが朱夏や久米が俺の勝手で変に言われてしまうのは…評判が下がっちまうのは…嫌だから…朱夏を思ってくれるなら…わかってくれ。ごめんな。お疲れ様」
二人は朱夏への思いは強いはずだ。だから俺たちのことは誰にも言わない。
実は入社当時二人は全く契約も取れず相当悩んでいてそれを救いだしたのが朱夏だから…
それにしても数日前までは朱夏が俺や瑠樹愛以外に触られることは平気だったはずなのにこんなにも嫌だと思う日が来るなんて…
我ながら女々しいな…朱夏の側にいられればそれでいいって…ずっと…思ってたのに…朱夏の熱を知ってしまったから…朱夏の俺たちに心を許し委ねる姿を見てしまったから…俺は欲張りになってしまった…
こんなんじゃ…俺は…いつか来る別れに耐えられるのか?…わからない…苦しい…辛い…痛い…でも…愛おしい…誰よりも…朱夏が…
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