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第80話
「長閑なとこですね」
剣聖先輩と来た場所は秘湯と呼ばれる温泉地。
有名な温泉地とは違いいい意味で寂れた感じが懐かしいような空気。
清流が流れる川に沿って多くの宿が立っている。
俺たちの泊まる宿は多くある旅館の中でもおそらく格式の高い場所。
通された部屋は離れになっていて部屋に川を眺めることができる露天風呂がついている。
浴場もいくつか種類があって大浴場や家族風呂時間帯で男女が変わる竹林に囲まれたまるで異世界に来てしまったような幻想的な景色が楽しめる。
部屋においてある浴衣は数種類あってどれも色柄が美しい。
「朱夏。湯巡りできるらしいよ。行ってみる?」
「うん!行く」
部屋に通されて浴衣に着替えて外に出る。
観光客もいるけどそこまで多くはなくてどこも待つことなく巡ることができた。
旅館に戻る前に土産物屋によって色々見ていたとき声をかけられた
「ご旅行ですか?その浴衣…同じ宿にお泊まりなんですね!せっかくなんでご一緒しませんか?」
凄く綺麗な二人組。おそらく年はあまり変わらなそうだ。
「今日は男二人でゆっくりしようって思ってて。君たちみたいな美人さんのお誘いは凄く嬉しいんだけどごめんね。」
百戦錬磨の笑顔の先輩に彼女たちは頬を染め俯き静かに去って行った
「どした?朱夏。女の子と廻りたかった?」
「いや…先輩やっぱかっこいいすよね」
「なにそれ。」
「今ので彼女ら落ちたっしょ?」
「知らね。俺は朱夏がいればいいからね」
「勿体無いなぁ」
「お前にモテなきゃ意味ねぇし」
綺麗な顔を歪めながら笑う。先輩の気持ちを考えると申し訳ないけれどやっぱりまだ踏み込めない。
そうこうしているうちに先輩は俺に飽きて他の人のところに行ってしまうかもしれない…それは嫌で…いつも思わせ振りな態度で先輩を引き留めてる…
ダメだよね。…わかってるのに…気持ちには答えられないくせに何て酷い奴なんだろう…
「朱夏どした?」
「ううん。何でもない。」
「土産どうする?」
「ん~…これだと沢山入ってるからいいかな」
「そうだな。温泉ぽいっしね」
「うん」
「瑠樹愛には何か別のもん用意する?」
「そうだね。色々お世話になったしね」
そうしていくつかお土産を選んで発送してもらうことにした。
宿に戻ると夕食までまだ暫く時間があったので部屋の露天風呂に浸かることにした。
「先輩も入ります?」
「後でいいわ。横んなっとく」
「はぁい」
部屋の露天風呂は桧の香りがして凄く気持ちがいい。川のせせらぎを聞きながら目を閉じる
たった数日で俺に起こったことは俺の中ではとても濃くて苦しくて…何も考えたくない。
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