81 / 120
第81話
部屋に戻ると先輩が眠っていた。
寝顔も本当に綺麗…どうして俺なんだろう…俺は先輩に多くのことをしてもらった。俺は何かしてあげたことはない。それなのに…
先輩の側に座り髪を撫でる
「ん…しゅ…か…」
掠れた声が色っぽくて息を飲む
「朱夏?ごめ…寝ちゃってた」
「大丈夫ですよ。朝から運転してくれたんだから疲れるのも当然です」
「朱夏…好き…」
「はい…」
「キスして?」
まだ寝起きだからか甘えた声でお願いされる。少し迷ってると
「ごめん。大丈夫!調子乗った。今何時?」
時計見たらもう夕飯の時間だった。タイミング良く部屋のベルが鳴り食事の準備をしてもらう。
「お酒は如何が致しましょうか?」
「折角だし頂こうかな」
「畏まりました」
暫くして地酒が運ばれてきた。
「俺遠慮します」
「大丈夫だよ、今日は俺しかいねぇしお前の可愛い姿は俺しか見ないから」
「いや…でも…」
「少し嘗めるだけでもどう?折角だし」
「じゃあ…少しだけ…」
口をつけてみると凄く甘い臭いがして思いの外美味しくてビックリした。
「美味しい」
「よかった。無理しない程度にな?」
「はい」
こうして夕餉も楽しく終えた。
「大丈夫?朱夏」
「はい。以外に平気です」
少し談笑していたら仲居さんがお膳を下げ布団を敷いてくれた
そして今はぼんやり月を見ながらさっきのお酒を二人で飲んでいた。
「先輩。ありがとうございました。今日は凄く楽しめました」
「俺もだよ。久しぶりにゆっくりできたしな。お前と一緒だしな」
「先輩…どこにもいかないで…」
「俺はいかねぇよ。」
「ん…」
「眠い?」
「少し…」
「布団行こうか」
「ん…」
布団に支えられながら横たわって目を閉じると一気に夢の世界へと誘われていった。
ともだちにシェアしよう!