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第82話
剣聖side
「朱夏…」
安心しきったように眠る朱夏。
「人の気も知らないで…ったく…そこが放っておけないんだけど…」
昔からどこか危なっかしくて離れるのことができなくて側にいた。ただ前の方がまだ警戒心はあったように思う。
社会人になってからは物腰も柔らかくなり以前と比べたら出会いも仕事上のものが主となり変に気を使う必要がなくなったのだろう。
酒だけは一緒に飲んだことはなくてあそこまで弱いとは思ってなくてあの日とても驚いた。まさかあそこまで酔った朱夏が無防備に振る舞うとは…朱夏の可愛さがみんなにばれてしまった。
正直面白くない。誰かいい人と出会って結婚して子供を為して…そんな普通の人生を送るとばかり思ってたからある意味女性社員たちが色めき立つのを喜ぶべきだったのに…
財前部長に派手な告白をして周りは酔った勢いで発した敬愛の意味かと思っただろう。でも俺や瑠樹亜にはすぐわかった。
朱夏の瞳の色はどう見ても敬愛ではなかったということ。
そしてその後の朱夏の誘い…誰にも取られたくなくて応じたけれどあれが間違っていたのかもしれない。
一度抱いてしまうとただ側にいるだけで良かったはずなのに欲が出てしまった。
朱夏が困るのは一目瞭然だったのに…それでも手にいれたいと思ってしまったらもう止まれなくて気持ちを打ち明けたのだけど…
過去に縛られたままの朱夏が首を縦に振ることは正直無い可能性の方が高い…
俺は…好きだけど…今回の旅行で朱夏を諦めようと…そう思ってる…
じゃないと前の朱夏との関係には戻れない。
朱夏が望むものは気が許せる一人の先輩っていう関係だから。
もう…朱夏には好きだとは言わない…
苦しいけどそれが朱夏が求めているものだから
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