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第98話

剣聖side 泣きそうな顔で朱夏が俺を見ている。初めて俺から拒否されたと思って辛いのだろう…でもそのままやって怪我させて後悔なんてしたくないしされたくない。迷子のように不安そうに俺の背中にくっついてくる朱夏に堪らなくて…そのまま抱き締めてやりたいけれど今は冷静にならなければ… 朱夏は愕然として力が抜けその場に座り込んだ。その姿を見ているのが痛いけれど、おそらくさっきので後ろは傷付いたはずだ…旅館側は俺たちの状況はおそらく詳細はわからずとも多少は理解していると思うからおそらく傷薬なんかは置いてあるんじゃないだろうか?そう思いフロントに掛ける。出た相手は女将の兄。支配人だ。この人もとても感じがよくて女将と同じ柔らかい空気を持ち仕事には厳しそうな人。 「すいません。救急箱ありますか?」 『ご用意しております。お体はいかがでしょうか?他に必要なものはありますか?』 「いえ。大丈夫です。お気遣いありがとうございます」 『すぐにお持ちします』 「お願いします」 電話を終えて振り返ると朱夏の顔色が優れない…また余計なことを考えてるのか? 「朱夏…っ…お前…何て顔してんの?ほら。おいで」 手を広げるけれど朱夏はそこから動けない。壊れた人形のようにこちらにギギギと音がしそうな位ゆっくりとこちらを見るだけだ 「朱夏。」 動けずにいた朱夏の元に歩みより抱き締めて額に唇を落とした 「朱夏。俺はね、お前に怪我させたくないの。あんな無理矢理したら怪我しちゃうでしょ?俺普通の人よりでかいし!」 すこしでも笑って欲しくて巫山戯たように朱夏に語りかけ笑う 「何それ!自慢?」 すると朱夏が久しぶりに光を取り戻して無邪気に笑う 「まだ俺よりデカイ奴には会ったことねぇからな。お前もデカイ方だけどさでもほれ。違うじゃん?」 「うーわぁ。嫌味?酷くないすか?」 よかった。朱夏が戻ってきた。 「その形とサイズで色んな奴と寝てきたんだろ?」 「…まぁ…そうすけど」 わかってはいたがやっぱりやだなぁ…でも俺も人のこと言えないけど 「否定しねぇんだ?」 「事実ですから。気付いてなかった?俺が遊んでたの」 「全く気づかなかったな。ショックー…」 本当に気付かなくて本気で泣きたいけどそんなことできるわけもないしそれをしたことでよくはならない。わかってるから泣き真似をする 「ははっ!似合わねぇ…」 「うるせー。でもよく遭遇しなかったなぁ。お前も男探してたんだろ?」 「あぁ。俺店とか使ったこと無いんで。出会い系かナンパされてたんすよ。コミュニケーション力そんなないんで店とかで話して先に進むなんて俺には難しいだろうし」 ナンパはわかる。そういう界隈にいれば普通に起こることだ。でも出会い系?似合わない…ていうか営業成績が常にNo.に入ってるお前がコミュ力無い?んな訳ねぇだろ。 「はぁ?いつも成績上位なお前が何言ってんだ?」 「仕事は仕事だからできるんすよ。プライベートになったらからっきしで…」 なるほど。タイムカード押したら別人になるって言うあれか?瑠樹亜みたいな?俺もいつもと違うって言われるがそれは無自覚だ そうこうしているうちに救急箱が運ばれてきた 「お。あったあった。」 中を開けると欲しかった軟膏が入ってた。未開封だからもしかすると俺たちのために用意したのかもしれない。実際はわからないけれど。朱夏の治療をするため持ってきてもらったと言う真実は隠しながら朱夏に語りかける 「流石にさローションは頼めねぇしな。これで少しでも楽になるだろ。まだやる気あればだがなけりゃあしなくていいぜ。言ってんじゃん?どんな形でもお前の側は譲ってやらないって。だから無理にしなくても俺はお前の側にいるんだからそんな不安になるなよ」 「…気付いてたの?」 「当たり前でしょ?」 「先輩…」 わかってるよ。繋がったことで俺が罪悪感にかられればお前から離れないと思ったんだろ?悪いな。そんなんしなくっても俺は離れる気はない。 「寝るか。お前寝てねぇし。」 寝不足も相まってやけを起こしたんだろ?だから眠らせないと。

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