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第100話

あんなことがあったのに人間の性なのかお腹は減って出してもらったものは完食した。 味はもちろん美味しくて堪んない。けど…久米のご飯がなんだか恋しい…なんて現金だよね。 今久米はどうしてるのかな?仕事大丈夫かな?あの人とはどうなったのかな? 「朱夏?何か別の奴のこと考えてたでしょ」 「え?」 「俺といるんだから今は俺だけ見てて…なんてだめかな?」 そうだよね。先輩といるのに…俺のことを想ってくれてる先輩といるのにこれじゃあ申し訳ない 「俺は先輩のことしか考えてないよ」 笑顔を見せると先輩も笑顔を返してくれる。 「あぁ。そうかよ。それならいい」 嬉しそうに目を細める。可愛いって思った。ねぇ。先輩。あなたを愛せるならばきっと俺は幸せかもしれない…でも…どうしても一歩が踏み出せないんだ… ねぇ…先輩。あなたは本当に俺でいいの? 繰り返し繰り返し同じことを思う。 「朱夏ー!おーい!戻っておいで」 「ん?」 「もう!まーた余計なこと…っ…!」 先輩の唇を己のそれでふさいでそっと見つめる。 「ちょっ…朱夏…」 「先輩。あのさ。」 「ん?」 「俺ね。先輩のこと好きなんだよ。」 「うん」 「だから…先輩。貴方にはあなたに相応しい人と…」 「またそれ?もう!わかってるって!仕方ねぇでしょ。好きなもんは。俺にお前が相応しくない?そんなのイヤでもわかってんよ。俺にはお前は綺麗すぎんの。外見も内面もね」 「いや。違くて…」 ポンポンと頭を撫でられる 「朱夏。あのね。お前は自分を過小評価し過ぎなの」 「先輩。」 「いいからいいから。そう深く考えんな。な?答えなんていらないからさ」 「…」 「泣くなよぉ…」 わかんない…涙が止まらない…きっと涙腺壊れちゃったんだ… 先輩が優しいのがいけないんだ… 子供みたいな八つ当たり。 ねぇ…どうすればいいの? 「しゅーかー!もう…わかった!泣け泣け!胸は貸してやる!ほれほれ」 ぎゅうぎゅう抱き締められて苦しい… 「ちょ…苦しい!先輩」 とんとん胸を叩くと力が少し弱まる。でも離してはくれない 「朱夏。」 「はい」 「朱夏」 「はい」 「朱夏」 「なんですか?」 「朱夏。お前は自分を許せ。な?もう十分だよ」 「…」 「南くんももういいって思ってるよ」 「…南…」 「朱夏。南くんのお話しする?」 「南の話し…」 「南くんを忘れろなんてやっぱり言えない。楽しかった時期だってもちろんあるでしょ?南くんのこと俺も知っていたい。一緒に背負いたい」 あのことより前のこと…出会ってからあの日までのこと… 友人から親友になりそして…あぁ…南…お前と出会えて俺はいろんな感情を知ったね。 喜びも怒りも哀しみも楽しさも…ねぇ…南…俺は…お前のこと本当に大切だった…お前のこと忘れたくないよ…でも…一人で生きていくのは…苦しい…

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