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第101話
「とても大切な人なんだね。会いに行こ?どこに眠っているかわかっているんでしょ?」
「わかる…」
「うん。じゃあ。明日行こ?」
「でも…」
「俺がお前と一緒に会いにいきたいの。だから…いこ?」
「わかった…」
南のお墓にはあれから一度も行けてない…ご両親も一緒に眠るあのお墓…
俺のせいで終わってしまった南。
ご両親は不幸な事故だった…でも…ご両親が事故にあったのは…俺のせい。
南のことで泣き濡れ…二人ともあまり睡眠も食事も採れてなかった故の運転ミス…
南は辛くてきつい治療を長年続けてやっと出来た待望の子供。出産直後南の母親は病によって子宮を全摘していたので唯一だった。
二人はとても子供が好きで俺のことも我が子のように可愛がってくれた…それなのに…俺のせいで…南があんな目に遭って…そして…
申し訳なくて…ううん…そんな言葉じゃ全く足りない…
「先輩。俺は罪人と変わりません」
「…朱夏。お前のどこに否があるの?ないよ。お前は悪くない。悪いのはどう考えてもその女の子たちだろ?」
「それでも…俺がいなければあの人たちは…今も幸せに生きていたはずだよ」
「朱夏。お前が言うこともわかるよ?でもね。いなくていい人間なんていないはずなんだ。南くんは…こんなに自分に縛られられているお前を見て喜ぶかな?嬉しいかな?ううん。きっとそうは思わない。だって。朱夏の愛した人だもん。朱夏に似て凄く優しくてあったかい人だと思うんだ。だから今胸を痛めているんじゃないかな?…ね?朱夏。会いに行こ」
「怖い…南の死を受け入れることは怖いよ…俺が…俺のせいで…」
「大丈夫。俺がいるでしょ?ちゃんとご挨拶しにいかなくちゃ」
「…わかった…」
「うん!よし。今日は何しようか?近くに体動かせそうな場所あったから行ってみる?モヤモヤの時は体動かそ!ほら!準備準備!」
「はい。」
温泉街から少しいったところにラフティングができる場所があった。激流に乗りながら大きな声も出して少しだけ楽になった気がした。
その夜…
『朱夏!朱夏』
『南』
『もう!まだもやもやしてるの?朱夏らしくないよ!早く…』
俺の都合のいい妄想が見せた夢だろう。でも…会いに行きたい…
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