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第107話

「ちょ…瑠樹愛…」 「プレゼント?」 「剣聖さんね、朱夏さん思い浮かべると何でも買っちゃうの。でもね、結局渡せなくて他の無難なもので済ませちゃってたみたいだよ。」 「そうなの?」 「あ…うん…」 「家でゆっくり開けて。剣聖さんの朱夏さんへの想い詰まってるから」 「ありがと」 「朱夏さん。安心してて。俺はもう迷わないから…だから大丈夫。」 そう言うと久米は俺を抱き締めた。耳元でいつもよりも柔らかい声でささやく 「朱夏さん。貴方の事が大好きでした。誰よりも大切でした…ありがとう。でも…もう俺は貴方を好きなことはやめます。ちゃんと俺自身を見てくれる人と向き合いたいから…だから…貴方の事はもう過去にします…大好きでした…愛してました…貴方だけ…唯一でした…だから…幸せになって…」 そういうとそっと俺の頬に口付けをした。祈るような優しいキスだった。 「あ!でもお弁当はいつでも作りますしいつでも料理振る舞いますから安心してね!」 体を離すともういつもの久米だった。 「剣聖さん。朱夏さんをよろしくね」 「わかってる。じゃあまたな」 「はい。またです」 パタンと目の前で閉まるドアを暫く見詰めて踵を返す。 久米があんなに柔らかい表情しているのは恐らく初めてみたかもしれない。それだけ飛弦さんに自分を許しているのだろう。 「朱夏。帰ろう」 「はい」 先輩の手を取って歩き出す。これからちゃんと先輩に想いを伝えなくちゃ… 車に乗ってもう一度手を繋いで帰路についた

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