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第10話

「ここ……」 「どうだ気分は」 「……平気だ」 柊羽と初めて会った時にも確か同じような会話をしたな…… 「俺が分かるか?」 「は?分かるに決まってるだろ」 「忘れてないのか?俺のこと……」 そう言えば、意識を失う直前も変なことを言っていたと思い出した。 「お前、俺に薬を飲ませた直後に変なこと言ってたけど……どういうことだよ」 すると、薬の話をすると思いきや柊羽はとんでもないことを語りだした。 「……お前の父親を殺したのは俺の一族ではない」 「なんだって?それと薬のことと何が関係してるんだよ」 「それは今から順に話すから待て。で、雅楽川宗一郎のことだけど……正確に言うと、俺を助けた為に命を落とした」 そして柊羽が口にした真相は思いもよらないことだった。 「雅楽川宗一郎は、獣人と人間が共存出来ないかと俺たちの生態を色々と調べていたんだ。そんな最中に、俺がある事件に巻き込まれた時、俺を助けようとしてかばって……そこで命を落とした」 柊羽をかばって親父が死んだ。 その事実があまりにも衝撃で、言葉が出てこない。 「……俺の話を信じるかはお前次第だけど、俺たち一族はただ盗みをしているわけではない。然るべき所へと宝石を返す作業をしているだけだ。だけど、だからこそ世間には公表出来ない。それは俺たちが獣人であって人間からしたら得体の知れない生物で受け入れられないと自覚しているから」 「でも、親父は共存させようとしていた……」 「雅楽川宗一郎は変わった人間だった。でも、世の中には明らかにしない方が上手く行く場合もある。だから、俺たちは共存することなく、あくまで悪役として生きる道を選んだ」 人間を殺した悪党と言うレッテルを貼ることで、本来の目的を円滑に進めることができるってことか。 だからいくら調べても真相が分からなかったのか…… 「そこで、薬の話に戻るんだが……」 「ああ……」 「俺たちは、魂の番だからこそ出会うべきではなかった。意味、分かるよな?」 「……俺からしたらお前たち一族は親父を殺された憎い敵、だから……ってわけか」 「……そうだ。俺たちは出会うべきではなかったのに、運命のいたずらで出会ってしまった」 運命…… 「だから、あの薬を使って番を消滅させようとしたんだが……」 「お前と二分して飲んでしまったことで効果は薄れてしまった……てとこか」 俺の解釈に柊羽がゆっくり頷くと、効果が薄れたのは誤算だったと力なく笑い、小さくため息を吐いた。

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