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3:本音

ピリピリとした空気に、ヒトラは深いため息を吐く。そのため息が嫌味に感じたらしいターリャが、ギロリとヒトラを睨んだ。 「………そんなに尻尾を打たれても、あまり状況は変わりませんよターリャ様」 「うるさい」 苛立ちに身を任せ尻尾を床に打ち付けるが、どうも気が晴らせない。それもそのはず。ターリャはここ1週間、イリと一緒に夜を過ごしていないのだ。一緒のベッドで眠ってもないし、一緒の部屋でも過ごしていない。 今でも忘れはしない。1週間前、しばらく1人で眠りたいと告げてきたイリの姿を。 何でだ!とターリャは最初思ったが、ここで無理に断ってイリが離れてしまう事態なったら。それが怖くて、イリの願いをターリャは受け入れてしまった。 きっとすぐに一緒に眠ってくれる。そう思っていたが、なかなかその兆しが現れない。もしかして、嫌われてしまったのだろうか。 「…………なぁ、ヒトラ。俺はイリに嫌われてしまったのだろうか」 さっきまで苛立っていたというのに、今度は泣きそうな声でポツリと呟いた。ターリャのその姿にヒトラは驚くが、しばらくしてクスリと笑った。 「何を笑っている」 「別に。ターリャ様は、とんだ勘違いをされているなと」 笑いながら言うヒトラの姿を、ターリャはポカンとした表情を浮かべて見ていた。しばらくヒトラは笑い続けて、そしていまだにポカンとした表情を浮かべているターリャを立たせた。 「来てください、ターリャ様」 ヒトラがそう言ってターリャを連れていったのは、イリとライタがよく使う自習室だった。ヒトラ自習室のドアの前にしゃがみ耳を済ませる。そして、ターリャも自分と同じようにするようにと手招きで誘う。 ドアの前にしゃがんで耳を済ませると、中の会話が聞こえてきた。 【イリ。そんなにターリャ様との子供を作るのが嫌なの?】 中から聞こえてきたライタの問いかけに、ターリャは気づく。最近イリから香る甘い匂いの正体に、ライタが気づいてることを。そして、イリ自身も気づいていると。 もしかしてではなくても、イリは自分との子供が欲しくないのか。そうターリャが結論付けた時だ。 【欲しくないわけじゃなくて。その、まだ、2人きりでいたいなって。ターリャの好きを、独り占めしたいなって、思っただけで、】 【………それで、甘い匂いが消えるまで1人で寝ようとしてるの?】 【そう】 少し泣きそうな声で話しているイリには申し訳なく思ったが、ターリャは思いっきり表情を崩していた。ヒトラが飽きれるぐらいデレっと。 嬉しい。イリの気持ちが嬉しかった。 「――――イリ」 我慢が出来なくなって、ターリャはドアを開けて中に入る。ポカンと口を開けたと思ったら、一気に顔を真っ赤にしたイリを、ターリャはきつく抱きしめた。

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