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第7話(番外編 魔王奮闘記)

俺は村人に言われるまま村外れにある洞窟に来た。 村に中級のモンスターが侵入してきたので、その発生源から侵入を食い止めようという考えらしい。 「“勇者”様お願いします」 武装した村人の1人に促され俺は先頭に立って洞窟に入る。 確かにそこにはスライムやら洞窟だからか虫系やら小型の低級モンスター達がちらほらと居た。 ファンタジーなこの世界なら低級モンスターぐらい冒険者達が何とかするだろうという思いはあったが、この世界に来てからお世話になっている村の人達からの頼みなので快く引き受けることにした。 それにこんな辺境の田舎の村になんて冒険者は滅多にこない。 この世界に召還されてから、こちらの暦上では5年になる。 なんでこんな事になっているかというと、俺は大学の友達と夏休みだからと海へ海水浴に来ている時に水中から急に足を何かに掴まれた気がして下を向いた瞬間強い力で水中に引きずりこまれた。 「うおっ!!」 慌てた俺は手を動かして水面に上がろうとするが、そんな事では抗える力ではなくどんどん息が苦しくなってくる。 友達と少し離れた場所に居たので、友達に気づいて欲しくて必死に身体を動かしたのがいけなかった。 当然ながら息が続かず水を大量に飲み込んでしまった。 苦しいからまたもがいて、もがくから苦しい。 やがて意識も保って居られなくなって目の前がブラックアウトした。 「オ…キテ…オキテクダサイ」 「うぅん?」 身体が揺り動かされているのか、寝ているのにゆらゆらと身体が揺れている。 聞いたこともない声に意識が浮上してきてうっすらと目を開けた。 白い天井が見えてあぁ助かって病院に運ばれたのかなとぼんやり思う。 「大丈夫ですか“勇者”様?」 「ゆ…ゆうしゃ?」 「あ、意識が!」 声の方へ視線を向けると見たこともない服を着ている女の子が此方を覗き込んでいて、視線が合った所で何処かへ足早に駆けて行ってしまった。 すぐに白い服に身を包んだ初老の男が先程の女の子に先導されて戻ってきた。 「あぁ。意識が戻られましたか!召還の場所が悪かった様ですな。水浸しで意識も無かったので心配しておりましたが、いやはや意識が戻って安心しました。なかなか勇者様を召還する儀式は骨が折れますからな」 「しょう…え?」 「これで我々も安心して王都へ帰れますぞ」 初老の男は俺を見下ろしながら満面の笑みで一気に捲し立ててくるので全く話についていけない。 日常生活では聞いたことのない単語ばかりなのと、意識が戻ったばかりのはっきりしない頭では理解ができなかった。 後ろに控えている女の子もニコニコしながらうんうんと頷いている。 この状況の意味が分からなすぎて目を白黒させている事しかできなかった。 そんな俺が置かれている状況きちんと説明されたのはあの初老の男と控えていた女の子と他数名の不思議な服装の集団が“王都”という場所に帰る直前だった。 「貴方様はこちらの世界を救うために呼び出された“勇者”様なんです!」 「はぁ…?」 いかにもファンタジーですと言わんばかりの服装の初老の男に力説され、俺は生返事しかできなかった。 目の前に居る男の話では、俺は異世界とやらに魔王を倒すために呼ばれた“勇者”らしい。 何処のゲームや小説の世界だよと内心思うが、話が突拍子もないながら実際にその召還とやらで死にかけた身としては信じざるをえなかった。 俺が召還とやらで連れてこられたのは王都から15日も離れた辺境にある村らしい。 ここは魔界やらという所との距離も近く人間にとって有害な生物が沢山でるので、その親玉である魔王を倒すために俺が呼ばれたと言っている。 言葉は“恩恵”と言うもので通じる様にできていると言われ、衣食住も村の人が用意してくれるとの話だった。 異世界転生とか異世界転移というジャンルがあるのは知っていたが軽くスマホの広告などで見る程度の知識しか無かった俺としては分からない事の連続で生活にも色々と苦労した。 そして冒頭に戻るというわけだ。 「私達はもう少し仲間を連れて来ますので、勇者様もご無理はなさらない様に!」 「ありがとうございます!とりあえず、なるべく減らしたら一旦戻りますね」 小さなパーティーを組んで洞窟に入って手当たり次第に近くに居るモンスター達を駆除していく。 異世界の人達と俺では基本的な防御力や体力などに違いがあるらしく、ここら辺に居る低級モンスター程度では俺は怪我もしないしまだ体力的にも余裕がある。 村の人達が一旦撤退すると言うので、俺はもう少し駆除してから帰ろうと声をかけた。 俺以外のメンバーが頷くのを確認してからトカゲみたいなモンスターに剣を突き刺す。 少し大きめのトカゲのモンスターからは汚い断末魔があがった。 「大きい奴等もさっきのトカゲの声で集まってきたな…。一旦帰って作戦会議でもするか」 どれだけ魔物を倒したのか分からないが、出てくるモンスター達の大きさが少しずつ大きくなってきている様に感じる。 これ以上ここに居るともっと強いモンスターが出てくる可能性もあるし、俺の手にも終えなくなってきてしまう。 最近強いモンスターも村に度々侵入してくるので討伐という名目で来たが今日はこれくらいで引き上げて次に備えようと俺は洞窟の入口へ後退していく。 「何で入口の方からもモンスターがやってくるんだ?あらかた面倒な奴は倒した筈なのに…」 入口付近に近付いているのに、入ってきた時には見なかった中型のモンスターまで居る。 何とかギリギリで倒せては居るが複数で囲まれるとなかなかきつい。 「え?嘘だろ…。入口が…無くなってる?」 やっとの思いで入口があった場所に来たが、大きな岩で蓋をされた様に行き止まりになっていた。 そんな事などお構いなしにモンスター達は襲ってくる。 蜂のようなモンスターに腕を攻撃され、運悪く毒針が掠めて血が出た。 じくじくとする痛みを我慢しながら必死に抵抗を続ける。 「くそ!次から次へとわいてくるな…うっ!」 止まないモンスター達の攻撃に体力的に限界を感じはじめていたが、ここで抵抗を止めると俺は確実に死ぬだろう。 そんな事を考えながら剣を振るっていたらスライムに足を払われ尻餅をついた。 すぐに体制を立て直そうとするも、体力的にもギリギリの俺よりモンスター達の方が早かった。 「ヒッ!」 ジュワッという音と共に身に付けている防具や服ががスライムによって溶かされるのが見えた。 今更ながらに恐怖で震えが出てしまうのは仕方のない事だろう。 手が溶けても構わないという思いでスライムを振り払おうと振りかぶった手を別のスライムに捕らえれる。 すぐにスライム達がわらわらと俺に集まってきたので遂に死を覚悟した。 「え?な…うごっ!!」 一体のスライムが口の中へ侵入してきて喉の奥に移動してくる。 直ぐに別のスライムが俺の腹の上を這う。 今から何が行われるのか分からないがスライムに食われるのは確かだろうと今から襲ってくる痛みを覚悟して目を瞑った。 「おぐっ!!おごっ!!」 俺の予想していたものとは違う衝撃が腹を襲う。 尻から侵入してきたスライムが胎内を行き来する。 口元を覆っていたスライムはいつの間にか下半身に集まりだし、上半身にはヒルのような軟体動物が貼り付いて俺の血を吸いはじめていた。 体験した事のない痛みと、嘔吐感に生理的な涙がぼろぼろと目から落ちる。 その涙にさえみた事のないモンスター達が集まってきてしまう。 「ひぎゅっ!!!」 腹を行き来していたスライムの動きが止まったのもつかの間で、そのあと腹の中に凄い圧迫感を感じて思わず嘔吐した。 昼食が少し溶けて形が残っている吐瀉物の臭いでなのかまたモンスター達が増える。 スライム達が身体から離れていく。 不思議に思って自分の身体を見下ろすと腹が見たこともない位に膨らんでいる。 まるで妊婦の様な腹の皮膚の下で何かが波打っているのが見えて、その見た目の気持ち悪さにまた嘔吐してしまった。 すぐに腹を突き破ってくるのではないかという恐怖で腹を抱えて身体を丸るめる。 身体に貼り付いているヒル達は俺が身体を丸めたからかすぐに腹なんかにも張り付いてきた。 「ぎもちわるっ」 尻から何かが出てくる強い排泄感に息むと、何か大きな物がずるりと出てきた。 それは一回だけでは留まらず何度も不快感が襲ってくる。 腹の圧迫感から解放された頃には先程のスライム達より小さな個体が俺を取り囲んでいた。 「え…うそ…おれ…スライム…」 それ以上言葉を続けることはできなかった。 スライム以外に集まってきたモンスター達が俺に我先にと襲いかかってきたからだ。 モンスター達が俺の腹に何かを注ぐと俺の腹が膨らんで、何かを注いだモンスターより小さな個体が出てくる。 何度目か数えるのも馬鹿馬鹿しく感じる回数同じことをさせられて、俺はやっとこいつらに孕まさせられて繁殖するための苗床にされているんだと気が付いた頃には胸から白濁した液体が溢れそれを兎みたいなモンスターの子供が吸っていた。 はじめの頃こそ痛かったりしたが、今は産む喜びと交尾の気持ちよさでまともな考えができる状態ではなかった。 「な…に?」 ドスンドスンという地面が揺れて俺を囲んでいたモンスター達が一気に居なくなった。 不思議に思って顔をあげると、少し離れたところから緑色の豚みたいな見た目のモンスターがこちらに歩いてくるのが見えた。 二足歩行で、尚且つ腰には布を巻いていることからある程度知能があるのかもしれない。 「え?ぎゃっ、ぎゃぁぁぁぁ!!!」 俺の側まで来たところで、豚みたいた奴に腕を摘ままれて持ち上げられた所でポキンと人から鳴ってはいけない音がした。 すぐに激痛が走ったので俺は叫び声をあげる。 そんな俺を気にすることなく豚は洞窟の奥へ戻りはじめた。 そこからは激痛が常に身体を襲い痛みの記憶しかなく状況などは曖昧でよく覚えていない。 「どうした?」 「ん?大丈夫なんでもないよ…」 後ろから俺を抱き締めてきた青年に微笑みかけると少し頬を膨らませたが、俺の腹を愛おしそうに撫でる。 俺の後ろに居るのは今の旦那様である若いドラゴンの青年だ。 城では人の姿になる術が常時発動している。 このドラゴンは少し前に俺と同じ姿になりたいと人形になる術が使えるようになったので必要ないがメイドとして働いているインプや下働きのモンスター達には必要なのだ。 俺が旦那様の頬にキスをしてやると嬉しそうに首もとに頭を擦り付けてくる。 犬系のモンスターみたいでかわいいなと思いながらまったりとした時間が過ぎていくのだった。

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