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第7話
「君がシャルルの妻かな?」
「っ!?は、はい」
何も気配は感じなかったのに、突然耳元で囁かれる。
びっくりして振り返ると、長髪の青年がいた。
ミシェルと同い年くらいかな……
誰だろう…
それにしても、シャルル様を呼び捨てって……
なかなかに位が高い事になる。
「ふふ、可愛らしいね。シャルルが囲ってただけある」
「囲ってた、訳ではないかと…」
ただ、お父様が心配して下さっただけ。
「そうなの?」
ちゃんと、分かってるんだ。
何も知らず幸せな振りをしておこうと思っていたけど。
シャルル様が、僕になんの興味も無いってことも。
結婚まで幼い時の一度しか会った事がないのが異常だってことも。
愛されていないってことも。
知っちゃってる。
「ねぇ、名前は?」
「レナ=オーヴァルニと申します」
「私はラウール。シャルルと結婚したら会う機会もあると思うから。よろしくね」
「っえ!?」
「ふふふっ。あっそうだ。ミーシェにたまには会いに来てって、伝えておいてくれる?」
ラウール様と言えば、第1王子様の名前だ。
そのまま彼は来た時と同じように、気配を消してどこかへ去っていった。
優しそうで綺麗な人だったな……
王族の方がこんな所に来るなんて。
というか、ミシェルの事も知っている様子だった。
ミシェルは僕の執事なのに……どうして?
会いに来てって……
皇族の方とどんな関係があるんだろう?
「レナ様、大変お待たせいたしました。」
「ミシェル……」
しばらくした後、ようやくミシェルが姿を現した。
ミシェルがいないと、やっぱりどこか不安になってしまう。
「本日のご予定はこれで終了となります。お帰りになられますか?」
それにコクリと頷くと、ミシェルは帰るための馬車の手配をし始めた。
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