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第9話
結婚式は夢のような時間だった。
はじめて、お母様とお兄様達を見ることが出来た。
お母様は、愛しているわ、私の可愛い子と花のような笑顔で言って、抱きしめてくださった。
お兄様達は、優しく、おめでとうと頭を撫でてくださった。
数年ぶりに会うお父様は、お前は私の自慢の息子だよといつもは見れない微笑みを浮かべて言ってくださった。
そして、何よりも10年振りにシャルル様にお会いできた。
笑顔を浮かべることはなかったけれど、僕を愛すると神様へ誓ってくださった。
初めて見た時と同じように、彼の狼耳としっぽはとてもかっこいい。
丸みを帯びていたそれらは、少しとがり艶を出している。
顔立ちもさらに大人びていて、僕なんかの旦那様になって頂くのが申し訳ないくらいだった。
言葉を交わすことはほとんど無かったけれど、隣にいられるのが幸せだった。
そんな色鮮やかな時間は、すぐにその色を消す。
ひと時だからこそ美しく見えるのだと分かってはいても、永遠に続けばいいと願ってしまった。
少しずつ人が減っていく中、僕はシャルル様の屋敷の、僕に与えられた部屋に案内された。
その夜、本来初夜のために訪れるはずのシャルル様は、その姿を見せることはなかった。
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