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第13話
重厚な扉を、少し怒りをちらつかせながらノックする。
「なんだ?」
「夜分に申し訳ありません。レナ様の秘書、ミシェルです」
「……入ってこい」
不機嫌そうな声が返ってくる。
そりゃそうか。
レナ様には興味がないのに、その秘書に訪ねられてるんだから。
「なんの用だ」
「レナ様についてです」
「……あれには自由にしていていいと言っておけ」
それが、レナ様を傷つけているのに。
正直、私にはシャルル様はどうでもいい。
ただ、傷ついているレナ様を前に、何もしないことが出来ないだけだ。
「レナ様は、シャルル様とご結婚なさることをとても楽しみにしておられました。シャルル様のことを好きだとも言っておられて」
「ははは、まさか嫌いだとは言えないだろう」
社交辞令なんかじゃない。
レナ様は好きだという言葉に絶対に嘘なんてつかない。
「一度、レナ様のことをちゃんと見てあげてください。これは、ただの政略結婚だ。でも、レナ様を巻き込んだのは貴方でしょう」
「ただの使用人が、大層な物言いだな」
「えぇ。レナ様いわくシャルル様はお優しいそうですから」
睨んでくるシャルル様の目をしっかりと見返して言い放つ。
押し黙った雰囲気を背に、失礼しますと部屋を後にした。
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