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第20話
ミシェルが渋々去っていった後、ラウール様は連れられ皇宮を歩いた。
着いたのは豪華な扉の前。
「ここが私の部屋。入って?」
調度品は白と銀で美しく、どこからともなくライラックの花の匂いがする。
ラウール様って白いライラックみたいだ。
確か、花言葉は無邪気。
「レナはストレート派?ミルク?レモン?」
「ミルクです。……あっ、僕がやります!」
「たまのお客様なんだから、おもてなしさせて?よし、できた」
ふわふわと湯気を出すティーカップを受け取る。
王子様に紅茶を入れてもらうなんて、恐れ多い。
「美味しいです。ありがとうございます」
「ふふ、良かった」
それから、ラウール様とは他愛のない話で盛り上がった。
「私もね、実はΩなんだよ。周りはαだと思っているけどね」
「え……?」
どんなドルチェが好きかって話題から、急に告白を始めたラウール様に戸惑う。
王子様がΩ……?
「ミーシェはね、私がΩだって一発で見抜いたんだよ。そして、その事を知っても誰にも言わずに、私への態度も変わらなかった」
……だから、ラウール様はミシェルの事を、ずっと気にかけているのか。
それにしても、二人はなぜ出会ったのだろう。
なんだか、しっかり考えられない。
僕が知らないミシェルの事を考えたくないのだろうか。
「ねぇ、レナ。なんで私が急にΩって言い出したか気にならない?」
「え…?」
「ふふ、もっと人を疑うことが必要だと思うよ」
あれ、ラウール様の顔がふにゃってしてる。
「私がΩって事はね、私が発情抑制剤をもってるってこと。そして、促成剤もね」
なんだか、ちゃんとラウール様の話が聞けない。
お酒を飲んだ時みたいに、ふらぁってする。
どうしよう、ラウール様の目の前で失礼なのに…
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