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第21話

ラウールの執務室は、ぐちゃぐちゃだった。 私を遠ざけるための嘘だと思っていたが、存外本当に掃除をして欲しかったのかもしれない。 無邪気な子供に見えて、実は色々と忙しいやつだから。 それにしても、ラウールはレナ様と何をするつもりだろうか。 ラウールの〔いい事考えた〕が、本当に良い事だったことなんてない。 シャルル様への、夜伽の誘い方を教えているのだろうか。 それとも、セクシーな下着を渡したり? あぁ…… 純情なレナ様のそんな姿、想像したくない。 考えている内に、粗方整理は終わった。 1時間弱ほどかかってしまったな。 ラウールの部屋に行っているだろうと目星をつけ、執務室を出た瞬間、異変に気づいた。 「甘い……?くっ、きつ……」 甘ったるい空気が身体にまとわりつく。 Ωの、発情期の匂い。 急いでハンカチを口にあて、ラウールの部屋に走った。 先程予想していたこととは全く違う、〔いい事〕に焦りが生まれる。 レナ様を強制的に発情期にして、シャルル様とやらせようと……? ラウールの部屋の扉を乱暴に押し開ける。 「ふふ、いらっしゃい。ミーシェがこの部屋に来るの、久しぶりだね。嬉しい」 「っの馬鹿が!私とシャルル様以外のαが来たらどうすんだ!?お前もΩなら分かんだろ!」 「それはちゃんと止める予定だったよ。この国で私といい勝負をするのはミーシェくらいだからね」 「…チッ」 こいつは、本当に突拍子もないことをする。 無視して、レナ様が横たわっているソファーに近寄った。 赤い顔で呼吸を荒くしている。 私でも、理性を失ってしまいそうだ。 「ミシェル……?」 ぼんやりとした目で見上げられ、名前を呼んでくる。 あぁ、だめだ。 頭を振り、レナ様を横抱きで持ち上げた。

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