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自決の覚悟
おおらかで、常に微笑を浮かべていた彼には考えられない判断力と行動だった。
「大丈夫か? 怪我、怪我は?」
琥珀様に訊ねられた頃には、もう室内には琥珀様と俺以外、誰もいなかった。
「……大丈夫です」
なんとか口を開け、心配してくれる琥珀様の問いに答えた。
だが、大失態を犯してしまった俺は、生きた心地などない。
恐れていたことが現実になった。
琥珀様に恋心を抱いた結果がこれだ。相手につけ込まれ、死を招く。
今回は俺の命を狙われただけだったから良かったものの、もし、それが琥珀様だったなら……。
考えただけでもぞっとする。
俺は忍の頭をする器でもなければ、琥珀様をお守りする資格もない。
「申し訳ございません!!」
「蒼?」
俺は深く土下座をすると、懐から忍用の小太刀を手にした。
肩衣 を脱ぎ、懐を引っ張って腹を出すと、刃を突きつけた。
刃で己の腹を貫こうと唇を噛みしめる。
「蒼! 何をしている!」
だが、俺の意志の通りにはいかなかった。琥珀様の手が、自決しようとする俺を制した。
「お放しください! どうか、どうか!! 俺は取り返せぬ失態を犯しました。忍に次などございません!!」
「蒼!」
「お願いです、死なせてください! 私は……貴方様を汚れた目で見てしまったのです。慕情を抱いてしまいました!! ですからどうかっ!!」
琥珀様を振り切ってどうにか自決しようとするものの、阻止しようとする彼の力は思いのほか強い。
「蒼! やめぬかっ!!」
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