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第8話

  一方、フリードの言葉に凍りついていたショウビはソーカを睨んでいた。 涼しい顔のソーカは、何でしょう?とすっ惚けている。 こういうときのソーカは手強い。本当に手のつけようがなかった。 諦めて目を凝らすショウビは、低く呟いた。 「────アレ、大人ひとつ分は余裕であるよね? あの莫迦が、どこぞの糞餓鬼に喰わしてやるって張り切って勝手に注文したときと、ほぼ同じ大きさだよ!」 お造りになった鮪はそのくらいの大きさだ。運搬費や冷蔵用の氷などを含めても金貨数十枚に当たる代物。 「ええ、1番大きいのを取り寄せました」 フリードの要望を受けて、ソーカは張り切って港街まで買いだしにいったという。 買いつけ名義はフリードではなく、ショウビの名義だ。勿論、その請求もショウビにくる。 「ねぇ、阿呆なの? 阿房なの!」 確かに仮判からは手厚い資金を手渡されてはいるが、ソコにはショウビの労い金も含まれているのだ。どこの世にタダで労働を提供する慈善家がいるというのか。 やがて、肩を落とすショウビにソーカが胸を張った。 「どうかされましたか? ショウビ様の身柄の確保と緒部族との和解料としては安い取引だと思ったのですが?」 ショウビが半ば唖然とする中、ソーカはべらべらと経緯を語りだす。そう、馬車の中で銀色の狼と対峙したショウビは、恐怖のあまり気絶してしまったのだ。 その間、ソーカはフリードとその背後にいた狼と交渉し、和解へと導いていたのである。 アレよアレよと話が纏まったのも、この約束ごとにあったからだ。 「そうだね、異論は本当ないよ。でも、そういうの、どうして私に報告しないの?」 自分の命が第1と考えているショウビは、最低だが、主人の意向をまったく汲まないソーカもソーカだった。 だが、莫迦と阿呆を比べたらまだ阿呆の方が可愛げがある。 残った鮪は集落の狼にも分け与えられて、美味しく頂かれているからだ。 あの莫迦は、そうではなかった。ショウビに後は任せたと捨て置いていったのだ。 「え? ショウビ様が1番、口が軽いではありませんか?」 ショウビは目を剥く。 「集落全体の秘密の催しですよ。ショウビ様が潰したら目も当てられませんって」 ソレまで知らなかった事実をもソーカの口から漏れるから、ショウビは右往左往しだす。 ソーカ曰くだ。ショウビは思っていることが全部口にでているらしい。 完全に嘘がつけない真鳥(真人)だった。あの莫迦が調子に乗っていたのも、その所為だったと気づくのである。 暫く茫然としていたショウビだったが、やがてふつふつとたぎる怒りに(うめ)いた。 「………ジャリード様も、フリード様も知っているのか?」 今までに1番静かな口調。ココで心の声が聞こえたなら、もう本当に蛆だ。糞だ。蝿だ。 ふっふっふっと嗤うショウビ。逆に空恐ろしさを感じるソーカであった。 「ええ、否定はできかねませんが」 冷静に真っ直ぐと、そして、はっきりとソーカは口にした。 ソレは、ショウビのいいところであり、悪いところでもあるからだ。 「残念な(ひと)だとはいっておりました」 ソレを聞いて、ショウビは固まる。彼の心が砕けたことは間違いない。  

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