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第3話 アサの目覚め
うるさい……
ふっと意識が浮上し、僕はぼんやりした眠気眼をこする。
頭上から響く声で目が覚めたようだ。
何を言われているかは分からないけど……異国人の言葉に違いない。
大げさな身振り手振りで、同じ言葉を繰り返す男性に僕は頭を傾げた。
何度言われたって、異国の言葉は通じない。
それにしても、いつの間にか僕は眠ってしまったのだろう。
父親はどこへ行ったのだろう?宴が終わったのなら、帰るぞと言って迎えに来てくれるはずだ。今が何時かは分からないが、外が明るいということはここで一晩過ごしてしまったということ?
疑問という疑問が頭に巡るがひとまず頭上の声を止めようと、ゆっくりと見上げると青い目をした大柄の船員たちが僕を見下ろしていた。
僕は、床に寝そべっているようだ。
ん?床が揺れてる?
次々と何かを必死で伝えてくる船員を眺めながら、僕の頭には嫌な予感が浮かんできた。
僕は異国の船に乗った。
その船が動いているってことは・・・
まさか。
残念ながら嫌な予感とは当たるものだ。どういう仕組みか分からないがそういうものなんだ。
はっと立ち上がりすぐそこにある窓に走り寄った僕の瞳には、揺れる波とどこまでも続く青が移った。
「え、どうしよう!?」
壁を伝い床に座り込んだ僕を見下ろす船員たちは困ったような顔をして何かを呟いている。僕はこの人たちの言葉も分からないし、これからどうしたらいいのかも分からない。
父親は?学校は?村のみんなは?幼馴染のキリは?飼い犬のナナの散歩は?
頭に巡るのは、親しみ慣れた人たち、大好きな光景、日常のすべて。
どれもこれも突然置き去りにするとは思わなかった大切な宝物。
体が震えて、頭がぐるぐると回り始めた。
底知れぬ不安に襲われた僕にできるのは茫然と色々な疑問を頭に浮かべることだけだ。
この船はどこに向かっているのだろう。
僕はどうやったら島に帰れるのだろう。
お父さん、お母さん、僕はどうしたらいいんですか?
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