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第21話 お仕置き
「で、あいつはどうすることになったんだ」
「然るべき処置をして、次の寄港地で降ろすことになりました」
「船長には?」
「私から簡単に説明はしました。ケン以外にも数名アサが引きずられて行くところを見た方がいたようです」
「そうか。助かった。で、どこにいるんだ?」
「トマスが引き取ってくれました」
「ああ、大食いのトマスか…」
「ええ、少々ストレスが溜まっていたようで、喜んでいましたよ」
「寄港地まで2日か。俺も100発ほど殴っておきたいが、トマスの好きにさせておいた方が痛いだろうな」
「そうですね、色々痛いでしょうね」
ふふふと優しく笑うとショーンは会議室の扉を開いた。
「コーヒーでよろしいですか?」
「頼む」
トマスは倉庫室の管理を任されている男だ。ひょろりとした背丈だが、楽々と大きな荷物を肩に抱えて移動するところをよく目にする。
実際確認した話ではないが、彼の趣味は大柄の男を屈服させることらしく、寄港地での束の間の休みでは酒場を周り男漁りをしているとの噂だ。
それゆえに彼のあだ名は「大食い」だ。たくさん食べるからではない、大男を「食べる」からだ。
俺もザックに焼きを入れたい。思い出しただけでも吐き気がする顔だが、アサに手を出した奴だ。ふざけた真似をしたら何が起きるのか思い知らせてやりたい。ドロドロとした感情が広がっていった。
「どうぞ」
渡されたコーヒーの苦みが口に広がる。
「やはり俺もあいつに一発…」
「そんなことしたらアサが悲しみますよ」
「だが、何発か入れないと気持ちが落ち着かない」
「気持ちは分かりますが、私の方で対処しましたので。それに、今はトマスが可愛がっていますよ」
「ああ…」
もう一度カップに口をつけると、コーヒー独特の匂いに包まれる。
「アサは…」
「ニール、アサは大丈夫ですよ。あなたといれば、アサの傷は癒えます」
「だといいがな」
腰を掛けたソファーから見えたのはゆっくりと海に沈む太陽だった。
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