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第22話 嫉妬
「おい、何やってんだ」
「あ!ニールお帰りいいぃぃぃ!」
「オ、カエ…リ」
扉を開けると、ケンとアサがベッドの上に座っていた。いつも二人で使っている部屋はもともと1人部屋だ。3人も部屋にいると窮屈でたまらない。
「ただいま…ってそうじゃねえ。ケン、お前は俺のベッドで何やってんだ!」
「え、アサとお絵描きしてたんだよ、ねーアサ?」
「ン…ニール…コ、レ…」
遠慮がちに差し出された紙に目をやると、恥ずかしそうにアサが視線を外した。
「あぁ。これは、アサが描いたのか?」
「ン…ハ、ナ…」
「綺麗だな。これはアサの島で咲いていた花か。いい子だ、アサ」
「そうなのー!それでね、これ、僕が描いた…」
「何だこりゃ。牛か?」
「ええええ!何言ってんの、犬だよ!」
犬…か、犬には見えないな…
「これのどこが犬なんだ?」
「このしっぽとーこの耳ら辺?」
「どう頑張っても犬には見えねえな。というかお前、早く俺のベッドから降りろ。もうお役御免だ」
「えーーーーー!もっとアサとラブラブしてたいいいい!」
「は?!アサと何したって?」
「アサと抱き抱きしたのー!」
「アサ、お前大丈夫か?」
アサに引っ付いているケンを押しのけると、ぎゅっと華奢な体を引き寄せた。
「ン????」
「だいじょーぶだよねえええ!ラブラブだもんねー!」
「ケン、お前はもう部屋に戻れ。アサといてくれたのは感謝する」
「ぶー。つまんないの。もうちょっといたっていいじゃん」
「良くない。この部屋にお前もいるとせまっ苦しい」
「わかったよー。よーいしょっと!アサ、また夕飯で会おうね!」
ケンは必要以上に大きい音をバタバタ立てながら部屋を去った。静かに行動するってもんができないやつだ。
これでも、いつか歳をとったら大人しくなっていくのだろうか。想像しづらいことを頭に浮かべていると、腕に温もりを感じた。
「ニール…」
ぎゅっと引っ張ってくるアサを見下ろすと、黒い髪がサラサラと動いた。ベッドの真ん中に座る小さな身体の横に腰を下ろすと、軽い重みがこちらに傾く。そっと背中を撫でるとほっと息が漏れる。
「大丈夫か?」
「ン、ダイジョ、ブ」
抱きしめると自分の体温より暖かい熱が心地よい。ケンと抱き合っていたのかと思うとなぜか腹が立ってくる。
―― 嫉妬か?
初めて感じる感情に困惑しながらも、腕の中の温もりをぎゅっと抱きしめた。他の人間がアサに触るのはもう許さない。この子は俺が守るんだ。
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